2022-01-01から1年間の記事一覧
今年劇場で見た映画の中からお気に入りベスト10を、観賞順に。『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』(感想)…ワクチン接種の予約の際に感じた複雑な気持ち、パートナーとの関係は世界へ開かれていなければならないのではという思い、割り切れないロマ…
「“ほぼ”アメリカ映画傑作選」にて観賞、メルヴィン・ヴァン・ピーブルズ監督の1970年作。差別主義者の…と言ってもここまで露骨に表出しないだけで多くの人間の認識がこのようなものじゃないかと思わせる…中流階級の白人男性が目覚めたら「黒人」に。外へ出…
テレビ局の会議において、その場でただ一人の女である局の看板アナウンサー、チョン・セラ(チョン・ウヒ)は「『アナウンサー顔負け』の容姿」と男達に賞賛される記者にケチをつけて蹴落とす。女の席はごく僅かで不安定だから、女同士がこうして傷つけ合う…
映画はケイコ(岸井ゆきの)が部屋でひとり、床に座って氷を噛みながら文字を書いているのに始まる。彼女が日々の記録のそのノートをあっさりと会長の妻(仙道敦子)に渡してしまうのにすごく驚いたものだけど、見ているうちにそれこそ大事な瞬間だったと分…
見るのが大変しんどいドキュメンタリーだった。猫=他者をコントロールしようとする映像が延々続くんだから(こんなにも「檻」が出てくる映画ってない)。それをするのは相手に死が迫っているから、死から遠い方が幸せだと思うからだが、「トゥンチョン団地…
「“ほぼ”アメリカ映画傑作選」にて観賞、エレイン・メイ脚本監督の1971年作。まごうことなきウォルター・マッソーのスター映画にして、あくまでも彼演じるヘンリー・グラハムが主人公の物語。彼がどんな奴かというほぼ一人芝居に冒頭かなりの時間が割かれて…
「うちらはこんなに頑張ってるんだから海に行ったっていいはず」。17歳の女子二人、アンジェラ(マイア・ミッチェル)とジェシー(カミラ・モローネ)が何を頑張っているのかというと、テキサスの寂れた町の一軒家、親はおらずダイナーの仕事のシフトを一回…
中央アジア今昔映画祭にて観賞、2018年ウズベキスタン制作、ラシド・マリコフ脚本監督。ソ連がアフガニスタンを侵攻した際に前線基地となったウズベキスタンの、アフガン帰還兵の物語。作中病院のシーンで視力検査表のうち一列がコリョマルというところにも…
中央アジア今昔映画祭にて観賞。2016年デンマーク-フランス-スウェーデン-アフガニスタン制作、シャフルバヌ・サダト脚本監督。前回の同映画祭で見た『カーブルの孤児院』(感想)の前日譚なんだそうでこちらも面白かった。アフガニスタンの山間の村、『孤児…
ハーパー(ジェシー・バックリー)の夫ジェームズ(パーパ・エッシードゥ)の「君が別れたいのはここ一年のぼくのふるまいであって、ぼくじゃない」にはなるほどと思ってしまった。私の知っている男性の多くが、「ぼく」という不変のものがありそれこそが大…
主人公アンヌ(アナマリア・バルトロメイ)と親友ブリジットが男を求めての外出前に胸を大きく見せようと下着に細工しているオープニングが秀逸。女にも性の欲望があり(ない女も勿論いようが)、自身の体を性的に目立たせるのがセックスに近付く最も流通し…
「残りごはんで作ったお姉ちゃん」を目にしたとき不意に分かった、アン・ラン(チャン・ツィフォン)を縛り付けるかに見えた6歳のアン・ズーハンこそが、彼女が生まれて初めて接した、自分から自由を奪う世界にまだ属していない存在なのだと。これは彼女が弟…
フィンランド映画祭にて観賞、エイナリ・パーカネン監督2022年作のドキュメンタリー。まずは登場するのが「フィンランド映画で見たことのあるような人」ばかり、あれらは実際を映し取っていたんだね、表情も光景も。「工事現場の扉を開けるのが仕事」の青年…
フィンランド映画祭にて観賞、テーム・ニッキ監督2021年作。多発性硬化症で視力を失い車椅子で移動する男が遠方の女性に会いに出掛ける話。演じているペトリ・ポイコライネンは実際に多発性硬化症を患っていると最後に文章が出る。起床時にアキ映画でもお馴…
フィンランド映画祭にて観賞、アリ・ハーパサロ監督2022年作。女子三人が金曜ごとの三度の冒険で新たな世界を獲得していく話。レズビアンの恋愛とアセクシャルの認識が描かれる。破壊的な行為をしてしまうとの告白に「あなたはそんなふうに見えない、きっと…
城戸(妻夫木聡)が自宅のテレビのディスプレイに見るぼんやりした彼自身の姿に、TLなどで時折目にする、ゲームや映画が終わった時そこに映る自身に興覚めだというような話…ジョーク?を思い出した。これは人は「外から見た自分」(そのものではなくそれを見…
アテネ・フランセ文化センターにて開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭で観賞、チョン・ジェウンによる2011年作。がん闘病中の建築家チョン・ギヨンを追うドキュメンタリーで、本人が「講義に声はいらないと神様がもってったんだろう」と話す、何とか…
街をゆくミセス・ハリス(レスリー・マンヴィル)の後ろ姿からのオープニングに、これが彼女のロンドンかと思う。ニューヨークに生まれデヴォンに移り住んだポール・ギャリコによるシリーズはMrs. 'Arris Goes to ParisにせよMrs. 'Arris Goes to New Yorkに…
オコエ(ダナイ・グリラ)はなぜヴィブラニウムがワカンダにしかないと思っているんだろう、そんなこと分からないのではと考えていたら、「鉱山の伝説が…」とのセリフから国による伝統教育がなされているのだと判明する(どんな物語なんだろう?)。そのしょ…
コメディに始まるが主題が展開するにつれシリアスになっていく韓国映画というのは結構あり、作り手の心情は分かるもののいまいち釈然としないことも多いけど、本作が本格的に笑わせにくる(演出が明らかにそうなる)のはアパートがシンクホールに落ちてから…
上映前に(1960年代のフランスで意図せぬ妊娠に見舞われた大学生を描く)『あのこと』の予告が流れた。映画の題材として何かを扱う時に色々な形のそれがあった方がいいというのは私にはつまるところ今現在それをどう扱うべきかという問題なので、この映画は…
学生時代から四半世紀以上ぶりに初めてスクリーンで見て、やっぱりヴァルダってすごいな、いいなと思ったので感想を少し書いておく。オープニング、不吉なパイプのこちら側に歪んだ格好で倒れて死んでいるモナ(サンドリーヌ・ボネール)の体にしばらく誰も…
冒頭、遠く逃げ込んだ異国の空き地にとめたバンに同胞を誘い込んで殺すカン・ヘサン(ソン・ソック)と、ソウルの路地で群集に写真を撮られながら立てこもり犯を捕まえ新聞にまで載るマ・ソクト(マ・ドンソク)、闇と光の対比。韓国の警察が韓国人を助けな…
コリアン・シネマ・ウィーク2022にてオンライン観賞した作品の記録。 ▼『ルームシェアリング』(2021年、イ・スンソン監督)はおばあさんグムブン(ナ・ムニ)と大学生ジウン(チェ・ウソン)の同居を描いた一作。ラストカットがうんこしている笑顔というの…
病院で目覚めたスジン(ソ・イェジ)を「夫」のジフン(キム・ガンウ)が車に乗せてゆく道のりが荒涼とした何かの中に潜っていくように見えたものだけど、着いた先は開発途中らしき荒地の中に建つ新しいアパート。やがてそこはいわば記憶の塔となる。「知ら…
オープニング、私にはいかにも丁度よいスピードで、かつては線路だったという道に車を走らせる二人の女。その後の物語を見ているうち、それは死ななければ国境を越えられない世界において愛と共に自由にあるためにはどちらに行くでもない、ほかでもない国境…
普段ならそういうことは思わないけれど、この従業員ほどの年の女性が見たらどう感じるかなと考えた。オーナーのカビー(ジェームズ・レグロス)がいの一番にあげるルール「NO DORAMA」をマネージャーのリサ(レジーナ・ホール)が無視する理由、その責任は彼…
1980年のサウスロンドン、ジャマイカ系移民二世の青年達。レゲエの知識が皆無なので見ていて分からないことだらけだったけど、レゲエ仲間といっても相当色んな奴がいる、色んなことをしている奴がいるということを描いた後でのガレージでの、一枚のレコード…
冒頭四人がやって来る、カビが生え、電球が切れ、手狭で暗いそこは全く家ではない。一応それまでの主であった父親(カイザー・チュアン)は一人での食事に慣れ茶碗を持てばかきこむばかり。母親(カリーナ・ラム)は彼とうまく寝られず13歳のファンイー(ケ…
映画は医療従事者のミーティングの様子に始まる。医師のエデ(ガブリエル・サラ)をファシリテーター及び指導者として、音楽やお菓子を楽しみながら参加者が思いを口にし助言を受けるというケアが行われている。あまり見たことのない場面で素晴らしい。彼ら…