2022-06-01から1ヶ月間の記事一覧

ポーランドへ行った子どもたち

映画はポーランドのとある場所でとある歌を歌い踊る女性をもう一人の女性がiPhoneで撮影しているの(を誰かが撮影した映像)に始まる。これはまず二人の女性の旅の記録のドキュメンタリーであり、一人は被写体であり脱北者であり家族を失った者、一人は監督…

ベイビー・ブローカー

「雨が降ったら傘を持って迎えに来てよ/行ってきます」なんて、ホテルの一室がまるで家となる、地に足着いていない旅の間だけの「ブローカー家族」。シフトを組んで赤ちゃんにミルクを飲ませ、細々した仕事を分け合ってこなす様子は家父長制の真逆にある理…

三姉妹

(以下少々「ネタバレ」しています)冒頭よりテンポよく繰り出される三姉妹の日常を見ながらなぜか「なぜ、なぜ、なぜ」と思わせられる。彼女らが地を這うような日々を送っているのはなぜなのか。その根源が少しずつモノクロで、やがて鮮やかにカラーで蘇り…

PLAN 75

オープニングに描かれる三つ、実際に起きた障害者殺傷事件を思い出さずにはいられない蛮行(加害者の「その後」は異なるが)、75歳以上に死を選択する権利を保障するプラン75の成立を告げるラジオのニュースの声、ホテル清掃という肉体労働に就いている高齢…

スープとイデオロギー

同じ週末に公開された二本のドキュメンタリー「FLEE フリー」(感想)と本作には通じるところが幾つもあるが、まずはサバイバーが数十年後に映画作りを経てある境地に達するまでを記録している点が挙げられる。あちらではそれが映画の終わりに私達の眼前に意…

FLEE フリー

オープニング、逃げる人々のアニメーションに被る、故郷とは?との問いへのアミンの答えは「そこから逃げなくてもいいところ」。少年時代には「いつも家にいてくれると分かっていた」母親の膝に頭を埋め髪を撫でてもらうのが最高に幸せな時間だったと語る彼…

走れ、ウイェ!走れ!

EUフィルムデーズにて観賞、2020年スウェーデン、ヘンリク・シュッフェルト監督作品。歌手のウイェ・ブランデリウスが実際の家族と共演し、パーキンソン病と診断された自身を演じる自伝映画。上映前に流れたメッセージ映像の「諸々の事情で僕はそちらへ行け…

不都合な理想の夫婦

英国人のローリー(ジュード・ロウ)の母(アン・リード)いわく「今の女は疑い深い、私は疑ったことなんてなかった、死んだ夫を知り尽くしてたからね」。アメリカンガールのアリソン(キャリー・クーン)は母(ウェンディ・クルーソン)に「難しく考えすぎ…

とても素敵なこと 初恋のフェアリーテール/サマーズ・タウン

特集上映「サム・フリークス Vol.18」にて観賞。岡さんの前説によるとVol.10の「マリアンの友だち」「タイムズ・スクエア」に対応する二作とのことで、言われてみれば確かにそうだ。二人でいることが力になるって話。 ▼とても素敵なこと 初恋のフェアリーテ…

オライの決断

ドイツ映画祭で見逃したものをEUフィルムデーズにて観賞、2019年ドイツ、メフメト・アキフ・ビュユックアタライ監督作品。妻の携帯の留守番電話にイスラム教徒が口にすれば仮離婚となる「タラク」との言葉を勢い余って残してしまったことから、別居によりこ…

ホーホヴァルト村のマリオ

EUフィルムデーズにて観賞、2020年オーストリア・ベルギー、エフィ・ローメン監督作品。クィアの若者が生き延びようと必死にもがく物語。オフビートの数滴で(母親がふと、息子が盗んできたある人物のカトリックの喪のベールを被ってみる場面など)見ている…