2022-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ドライビング・バニー

子を愛しあれこれする母親の表象は多いが「『ダメ』な自分のせいで」子と上手くいかない母親のそれは少ないから、こういう作品があるのはよい。ただ男性が主人公のそうした映画の多くが物語の柱を複数据えているのに対し(スポーツとかね、女性が主人公のも…

秘密の森の、その向こう

映画は時計の針の音、すなわち時は否応なしに流れていくということを示しているのに始まる。ネリー(ジョセフィーヌ・サンス)の施設のおばあちゃん達への別れの挨拶は、以前からの習慣だったとしても今はより念入りにしているんじゃないかと後に考える。「…

オルガの翼

映画は2013年の陽の光の元のオルガ達に始まる。冒頭の、仲間と体操の練習中にふざけたり親友サーシャの演技についてコメントしたりコーチに励まされたり「キーウの大規模工事の裏で市長にお金が流れてると記事にしてるのに何も変わらない」と仕事に奔走し大…

LOVE LIFE

「違うの、守るっていうのは死なないってことじゃないの」とは愛の対象がそこに居るか否かは関係ないという意味だから、このセリフからこの映画が「LOVE LIFE」をどう解釈しているかが分かる。同時にオセロを「ゲーム」で済ませてしまうような明恵(神野三鈴…

ビースト

イドリス・エルバ演じる「娘とぎくしゃくしている、現在は一人身の男性医師」という主人公の設定は監督のバルタザール・コルマウクルが製作・脚本・監督を手掛け主演もした『殺意の誓約』(2016年アイスランド製作)とほぼ同じ。何かを映し出しやすいキャラ…

NOPE ノープ

遅刻常習の妹エム(キキ・パーマー)が皆の前で滔々と語る「映画初のスタントマンにして調教師にしてスターは私のひいひいひいおじいさん、黒人は映画の誕生時からそこにいた」という口上に惚れ惚れしていたら、その、映画の観客への説明というより世界へ認…

ゴー!☆ゴー!アメリカ 我ら放浪族/ウディ・ガスリー わが心のふるさと

特集上映「サム・フリークス Vol.19」にて観賞、自ら選んで放浪の旅に出る男を描いたアメリカ映画二本立て。終わってみれば見る順番も肝だった。 ▼「ゴー!☆ゴー!アメリカ 我ら放浪族」(1985年アメリカ、アルバート・ブルックス監督)は、カリフォルニアの…

Zola ゾラ

性的人身売買を扱いながら軽快に見せる映画というのがあって、90年代以降のそれらは「お話」でもって空気をコントロールしてきたように思うんだけど、この映画は空気を変える出来事の数々が当事者に伴走しているようなリアルさを持っており、独自の演出が盛…