2023-09-01から1ヶ月間の記事一覧

ハント

「ぼくらの税金で買った銃をぼくらに向けるのか」とはイ・ジョンジェがブレイクしたという、光州民主化運動を描くために作られたドラマ『砂時計』(1994)の名台詞だが、この映画は何百人もが殺された光州民主化運動の回想シーンにおいて死体しか映さない。…

ルシアの祈り メスキートの木の奇跡

ラテンアメリカ・カリブ海グループ映画祭にて観賞。2019年メキシコ、アナ・ラウラ・カルデロン監督作品。映画の終わりに「長いあいだ差別を受けアイデンティティのために闘い続けるヨレメ族はじめ先住民の人々に捧げる」。主人公の少女ルシアの祖父母のセリ…

ダンサー イン Paris

主人公エリーズ(マリオン・バルボー)の筋肉に見惚れてしまう腕に始まる冒頭からしばらく、ダンサー同士で衣裳を留め合ったり柔軟運動をしたりという、パリ・オペラ座バレエの『ラ・バヤデール』上演前の裏側、いわば現実が描写される。ボーイフレンドの「…

PIGGY ピギー

『ファルコン・レイク』ほどじゃないけれど、宣伝から予想し得ない内容だった。夜中3時の警察署でコーヒーを前に嗚咽するサラ(ラウラ・ガラン)が心の内を吐き出そうとするのを、娘を追い込みコントロールすることでその行く道を潰してしまっている母親(カ…

ロスト・キング 500年越しの運命

スティーヴ・クーガンの関わる映画に外れなし、スティーヴン・フリアーズとの組み合わせなら尚のことと思っているので初日に観賞。当初プロデュース兼共同脚本兼、サリー・ホーキンス演じる主人公フィリッパ・ラングレーの「背景」的な役かと思いきや重要な…

ペパーミント・キャンディー/グリーンフィッシュ

特集上映「イ・チャンドン レトロスペクティヴ4K」にて、滑り込みで二作を観賞。 ▼久しぶりに見た『ペパーミント・キャンディー』(1999)は大傑作だった。チェ・ジョンヨルの『グローリーデイ』(2015)を見た時、これは韓国の男性は美しく生まれるがみな汚…

ベネチアの亡霊

物語の舞台は原作『ハロウィーン・パーティ』の60年代イングランドの「どこにでもある村」と異なり1947年のベネチア。最後に舟で発つのは、第二次世界大戦によってとりわけ大きな傷を負った者達である。ポアロ(ケネス・ブラナー)は冒頭、原作では顔を合わ…

グランツーリスモ

ブロムカンプの映画ってこんなにテンポがよかったっけと驚いてしまった(振り返るとそれは「時間がないので」と言いつつ噺をはしょるのでなくいつもより早口で済ませる落語家…実際にあった話…のようなものでテンポじゃなくスピードの問題なのかもしれないけ…

熊は、いない

単なる街角が「映画」になってゆく見事なオープニングに、それにしても「めくるめく」すぎやしないかと訝しんでいたら、それはパナヒ演じるパナヒがイラン国内の国境近くの村からリモートで撮影している映画なのだった。始めこそ「パナヒが紡ぎたい物語の具…

6月0日 アイヒマンが処刑された日

1961年のイスラエル。父親と交換した靴を履くことはできるが炉に入れる程まだ小さな少年ダヴィッド(折角の靴は確認されることもなく炉の掃除で恐らく汚れてしまう)はアイヒマンのことを知らずクラスで浮いている。「アラブ系だから差別されていると思って…

ファルコン・レイク

オープニング、ケベックの避暑地に向かう車内で幼い弟ティティを愛おしむふうな目つき、到着してベッドの上下になど全くこだわらない様子から、主人公バスティアン(ジョゼフ・アンジェル)は不満がない、というより欲望がない、何というかまっさらな存在に…

マルコム 爆笑科学少年/愚直な殺人者

特集上映「サム・フリークス Vol.24」にて二作を観賞。いつも組み合わせが素晴らしいけれど、今回はとりわけ、これまでになく、有機的に絡んでいるように感じられた。 『愚直な殺人者』(1982年スウェーデン、ハンス・アルフレッドソン監督)の主役、「知恵…

復讐の記憶

80代のハン・ピルジュ(イ・ソンミン)が自らに刻んだ文字を目にした少女が中国語でしょ?その母親が習ってるんです、これからは中国語だからというようなことを言う場面に、今の韓国では漢字といえば中国なのかと思うわけだけど、そもそも20代のパク・イン…