2023-07-01から1ヶ月間の記事一覧

裸足になって

声を失い無言で横たわる娘の口元に母が耳を寄せ「何か話して」と語りかける画があまりに鮮烈で、ここがどん底なのかと思う。メッセージは口から耳へ伝えられるものだというところで膠着しているならそれを振り切る必要があり、娘はその後、これまでとは異な…

不安は魂を食いつくす

開催中のライナー・ヴェルナー・ファスビンダー傑作選にて、好きな映画をスクリーンで初めて見た覚書。雨の日に出会った二人は雨の日に結婚する。話のできる友だちとセックスし結婚するなんてすごいロマンだ。それが世界は気に入らない。アリ(エル・エディ…

世界のはしっこ、小さな教室

少なくともドキュメンタリー「映画」(劇場公開されるものでも、配信のみのものでも)では昨今珍しくなった、被写体の誰でもない声のナレーションが、都会から赴任地へ向かうサンドリーヌに被せて「かの地もブルキナファソだから」と語るのに勝手にそんなこ…

バーヌ

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のオンライン上映にて観賞。2022年アゼルバイジャン・イタリア・フランス・イラン、ターミナ・ラファエラ監督作品。殉国者は死せず、国家に分断なし。奪還もしくは死…奪い返した地に帰る人々の喜びの舞の脇で抱き合う、戦地に戻…

シックス・ウィークス

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のオンライン上映にて観賞。2022年ハンガリー、ノエミ・ヴェロニカ・サコニー監督作品。養子縁組が成立しても出産から6週間は実母が子を取り戻すことができるという法のもとでの、出産した高校生のその日々を描く。冒頭ゾフィ(…

あなたを探し求めて

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のオンライン上映にて観賞、2023年イギリス作品。映像作家であり障害者のエラ・グレンディニングが自分と同じ体の人を探す6年間の旅の記録。「その病院では初めてのケース」「珍しくて統計すら出ていない」「私は自分のfreakishn…

助産師たち

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のオンライン上映にて観賞。2023年フランス、レア・フェネール監督作品。助産の仕事の現在を新人のソフィア(カディジャ・クヤテ)とルイーズ(エロイーズ・ジャンジョー)の目を通じて描く。このくそ忙しいのに新人の訓練なんか…

ヴィーナス・エフェクト

レインボー・リール東京にて観賞、2021年デンマーク、アナ・エマ・ハウデル監督作品。両親が営む農園に勤める20代の女性の人生が、ある女性との出会いによって変わっていくさまを描く。明るい日光、あふれる緑、鳥の声、そよぐ風、多くの人に素晴らしく映る…

孔雀

レインボー・リール東京にて観賞。2022年韓国、ピョン・ソンビン監督作品。あるトランスジェンダー女性の帰省と世界との調和を描く。ミョン(ヘジュン)は性適合手術の費用1000万ウォンを稼ごうとワッキングダンスの大会に出場するが、「自分の色がない」と…

サントメール ある被告

「なぜウィトゲンシュタインを?アフリカの女性が20世紀始めの哲学だなんて、もっと身近なテーマにすればいいのに」には、哲学科を当たり前のように卒業した私としては日本で日本人として生きるって何て呑気なことだろうと思わずにいられなかった。尤もこの…

1秒先の彼

リメイク話を聞いた時に気付いて然るべきだった、これは岡田将生を生き人形にするための企画なんだと。バスの窓からの画で「美」に興味のない私にも衝撃が走った。加えて「死んでるんですか!?」というオリジナルではあり得なかった突っ込みから死体コメデ…

旅行の記録

祖母の故郷の村上へ。千年鮭きっかわの町屋の店舗で買い物したり、笹川流れで遊覧船に乗ったり。瀬波温泉の夕日と翌朝の村上大祭(これは19台のうち唯一、女性が「上」に乗っていた屋台)。村上での家でのごちそうに加え、新幹線内で新商品のずんだアイスク…

ひとつの青い花

EUフィルムデーズにて観賞。2021年クロアチア・セルビア、ズリンコ・オグレスタ監督作品。工場勤続20年の節目を迎えるミリヤーナが一緒に住む娘、たまに会う母と共に過ごす二日間を描く。見ている間も見終わった直後も、こんな映画いらないじゃんと思ってい…

カルメン

EUフィルムデーズにて観賞。2022年マルタ・カナダ、ヴァレリー・ブハジャール監督作品。80年代のマルタ島の教会を舞台に、牧師である兄の家政婦として生きてきたカルメンの独り立ちを描く。田嶋陽子の『新版 ヒロインは、なぜ殺されるのか』にジョン・セイル…