シックス・ウィークス


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のオンライン上映にて観賞。2022年ハンガリー、ノエミ・ヴェロニカ・サコニー監督作品。養子縁組が成立しても出産から6週間は実母が子を取り戻すことができるという法のもとでの、出産した高校生のその日々を描く。

冒頭ゾフィ(カタリン・ローマン)の母親が若い男にくってかかっている。妊娠は一人の行為の結果じゃないということをまず言っている。加えてそのことにつきどう対処するかは当人が決めるのだとも言っている。ゾフィは白を切る男を見もせず母の腕を掴んで帰る。

ゾフィは生まれた子を養子に出す理由を「情緒不安定な母と幼い妹との三人暮らしだし、卒業までにスポーツで結果を出さないとチャンスを逃すから」と述べる。養子縁組を確認した仲介人?は「全て順調」と言う。そうなんだろう、でもそれらの言葉の行間にある実際の一つの例がここには描かれている。

序盤に「秋にEU杯、来年には卒業試験と進学」を控えたゾフィの日常が描かれる。とはいえ妊娠が飛び込んできた日常であり、そのことで実は普段から彼女が「一人」である、あるいはすぐそう滑り落ちる環境にいることが分かってくる。出産を終えても、子と一緒でなくても「以前に戻る」わけではなく、乳は腫れ股からは出血し腹は出っ張ったまま、そうした状態ゆえ、あるいはそれ以外の面で変わらざるを得ず、更に「一人」度が進む。男といちゃつく母の部屋で寝かされている妹を救い出して添い寝する場面がとてもよい(妹が実は起きているのが、彼女にも彼女の色々があることを示唆している)。

しかし最後にゾフィは大変に大きなもの、いわば世界と繋がるのだった。映画の終わりに彼女が目を閉じる時、私も何かと繋がることができるような気がして目を閉じてしまった。あのあと彼女は周囲との個々の繋がりに還るはずだ。でも満身創痍を経なくてもそうできるよう、うちらにも何かが出来ると思う。