あなたを探し求めて


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のオンライン上映にて観賞、2023年イギリス作品。映像作家であり障害者のエラ・グレンディニングが自分と同じ体の人を探す6年間の旅の記録。

「その病院では初めてのケース」「珍しくて統計すら出ていない」「私は自分のfreakishnessを肯定してる」「でも自分だけ異質って感じがつきまとう」「いつも仲間はずれだと感じてた」「自分と同じ障害の人には一人も会ったことがない」「(片脚に障害のある子らの動画を見ながら)両脚に障害のある大人を見つけたい」。
自分じゃなく社会がそうさせるのである。エラは学校に行くようになって、後に会う「同じ体」のチャーリーの母親も息子が幼稚園に行くようになって世界が一変したと言う。それまでは問題がなかった。

撮影を始めて程なくエラは妊娠、息子リヴァーを産む。特殊な例だという血栓の辛苦に耐えての予定より一か月早い帝王切開での出産。前日見た『助産師たち』の時には出産において医学のいわば領域がまたがり得るということに思い至らなかった。
母親になった、すなわち子でも親でもある存在となったエラは障害児とその親につきまとう問題により接近していく。パンデミックで取材に出られないなか動画を探すと手術した子どもばかりが目につく。手術を控えた幼いディランの母は子ども時代を失うほど過酷だと分かっているが周囲の言葉が受けさせるのだと言う。エラの父親は言っていた、「非障害者の考えは常に『どうしたら我々と同じになるか』」だと。

アメリカに渡って「同じ体」のプリシラやリカルド、チャーリーと会って話し、他者の人生や考えに触れ、同じ属性の人が複数いてこそそれぞれの違いが分かると実感したエラは、ディランの母へ問いかける際に涙をためていたのをチャーリーの母の言葉で決壊させる。迷い悩むが息子が快適であることが一番重要なのだと。坊やはパーフェクトだとエラ。
その足で訪ねたマイアミの有名医師ペイリーは手術は過酷だから物心つく前に終えなければだめだ、私の説明を聞けば親は必ず同意すると話すが、研究所を出たエラは彼はいい人だが差別意識がある、私達には自分の気持ちが何より大切なのだと語る。旅の終わりが近付いている。

リヴァーの父親であるスコットは「マッチングアプリで知り合ったすてきなパートナー」。出産前から出産時、普段の生活でも取材旅行でも一緒だが、彼がカメラの前で何かを話すことを求められる映像はない。スタッフは彼のことも撮らなきゃと言ったそうだが、エラいわく「みな無意識に非障害者のヒーローを求めてるけど、彼はそうじゃない、私たちは平凡なカップル」だからあえて背景のように映しているのかもしれない。そうでなくとも、何となく、彼がどうというわけじゃなく、そうする気持ちは分かる気がした。