助産師たち


SKIPシティ国際Dシネマ映画祭のオンライン上映にて観賞。2023年フランス、レア・フェネール監督作品。助産の仕事の現在を新人のソフィア(カディジャ・クヤテ)とルイーズ(エロイーズ・ジャンジョー)の目を通じて描く。

このくそ忙しいのに新人の訓練なんかと目の前で繰り返され、私生活の涙で崩れた化粧を落としスマホと感情はロッカーへ。いわく「赤ちゃんにとって最善の状態」のために、患者の前では落ち着いて見えるように(走りはしないが)飛び回る。病室の場面の数々から、未経験の私にも、子どもを産むとは体が壊れそうになることなんだと分かる。母になった女性の全てが子を持つのをその場で受け止められるわけじゃないということも。

何とか耐えた勤務の翌日、医師の「『津波』を乗り切ったねぎらいに寿司をおごる」でストの話題が切り上げられる。考え方、やり方が少しずつ違う助産師たちが常に人手不足で設備に恵まれず低賃金という環境で働く中、有能で積極的なソフィアこそがはみ出していく。全員を全力で助けるべきだと「仲間」を探して一人一人に訴えるが、倒れるわけにいかないと抑制している周囲は彼女を休ませるしかなす術がない。更にあらゆる職業においてそうだろうけど、良心があるほど、職場で私生活をロッカーにしまっても仕事の方が家まで侵食してくる。

物語はソフィアとルイーズが病院を自身の居場所とし生き生きと働いているのに終わるが、映画の最後は現実のデモの映像。今のままでは全くもっていけない、何も解決していないとのメッセージが伝わってくる。全編通じて助産が「人間的」の極限、まさに人がやるべき仕事であること(専門性とそれとは勿論共存する)、そういう仕事ほど「人間的」なことが削られているということが描かれている。そして、ストには参加せず職場を去る者を誰が責められようか?