2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

不思議の国の数学者

終盤マンションを後にするイ・ハクソン(チェ・ミンシク)の背中にジウ(キム・ドンフィ)が「証明するんだ、転校するな」と自らが彼に掛けられた言葉を投げることからも、この映画では脱北者と特例入学者(低所得家庭枠での入学者)とが重ねられていると分…

アダマン号に乗って

冒頭一人の男性がテレフォン『人間爆弾』を歌う様子にフィンランド映画祭で見た『カラオケパラダイス』を思い出した。司会者の女性はセラピストになりたかったが家計の問題で断念したと話していたし、多くの人達が既成の言葉に自らの思いを込めて歌っていた…

午前4時にパリの夜は明ける

父親に「良識や感性が必要な仕事はいくらもある、今は変化の時だし」と言われる母親エリザベート(シャルロット・ゲンズブール)と歴史教師に「詩人になりたいなら本腰を入れて、うわの空はよくない」と言われる息子マチアス(キト・レイヨン=リシュテル)…

高速道路家族

妊娠中のジスク(キム・スルギ)の夫ギウ(チョン・イル)への最後の言葉は「あなたを切り離せば私達はやっていける」、これは家長がクビを切られる話である(ちなみに同じ日に見た『レッド・ロケット』でも主人公は妻に最後に「真実」を言われ追い出されて…

私はニコ

ドイツ映画祭にて観賞。2021年ドイツ、エリーヌ・ゲーリング監督、イラン系ドイツ人の女性ニコ(サラ・ファジラット、プロデューサー・共同脚本兼)の生きざまを描く。オープニングでは風に髪をなびかせ陽にむき出しの腕をさらし自転車で駆け、仕事先の人々…

焦燥の夏

ドイツ映画祭にて観賞。2021年ドイツ、サブリナ・サラビ監督、アリナ・ヘルビングの同名小説(原題Niemand ist bei den Kälbern、直訳は「誰も子牛のそばにいない」)を元にメクレンブルク地方で恋人の実家の酪農家に居候する若い女性クリスティン(サスキア…

幻滅

主人公リュシアン(バンジャマン・ヴォワザン)について「彼がどんな波にさらわれたのか」、彼が出てきたパリについて「絵付き広告に添えられているのは新しい言葉だ」と語るグザヴィエ・ドランの声にその後の展開を激しく予想して…たったこれだけで何かを伝…

聖地には蜘蛛が巣を張る

マシュハドへやって来たジャーナリストのラヒミ(ザーラ・アミール・エブラヒミ)はテヘランの職場での話からしても地続き極まりない世界を移動してきただけでそこでもどこでもよそものではない。加えて家長の保護を受けない、その元にはいない女、要するに…

ブラック・アジェンダ 隠された真相/ヤラ!ヤラ!

特集上映「サム・フリークス Vol.22」にて、チラシにあった通りまさに「ケン・ローチ×ルーカス・ムーディソン 夢の2本立て!」を観賞。 ▼『ブラック・アジェンダ 隠された真相』(1990年イギリス、ケン・ローチ監督)は、80年代に検閲による妨害を受け続け妥…

パリタクシー

オープニング、タイトル(作中では「美しき旅路」と訳される)と監督クリスチャン・カリオンの名前が出たところでカメラは青い空を見上げる。シャルル(ダニー・ブーン)にそんな心の余裕はないから何かの予兆のようだ。外で待っていたマドレーヌ(リーヌ・…

トリとロキタ

オープニング、ビザ取得のための面接を受けているロキタ。次第に答えに詰まりパニック発作を起こす。程なく私達には彼女の話していたことが全て嘘だと分かる。こうした類の「嘘」や発作はこれまでの映画であまり見たことがない。小柄なトリの、道路の向こう…