2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

シスター 夏のわかれ道

「残りごはんで作ったお姉ちゃん」を目にしたとき不意に分かった、アン・ラン(チャン・ツィフォン)を縛り付けるかに見えた6歳のアン・ズーハンこそが、彼女が生まれて初めて接した、自分から自由を奪う世界にまだ属していない存在なのだと。これは彼女が弟…

カラオケパラダイス

フィンランド映画祭にて観賞、エイナリ・パーカネン監督2022年作のドキュメンタリー。まずは登場するのが「フィンランド映画で見たことのあるような人」ばかり、あれらは実際を映し取っていたんだね、表情も光景も。「工事現場の扉を開けるのが仕事」の青年…

タイタニックを見たくなかった盲目の男

フィンランド映画祭にて観賞、テーム・ニッキ監督2021年作。多発性硬化症で視力を失い車椅子で移動する男が遠方の女性に会いに出掛ける話。演じているペトリ・ポイコライネンは実際に多発性硬化症を患っていると最後に文章が出る。起床時にアキ映画でもお馴…

ガール・ピクチャー

フィンランド映画祭にて観賞、アリ・ハーパサロ監督2022年作。女子三人が金曜ごとの三度の冒険で新たな世界を獲得していく話。レズビアンの恋愛とアセクシャルの認識が描かれる。破壊的な行為をしてしまうとの告白に「あなたはそんなふうに見えない、きっと…

ある男

城戸(妻夫木聡)が自宅のテレビのディスプレイに見るぼんやりした彼自身の姿に、TLなどで時折目にする、ゲームや映画が終わった時そこに映る自身に興覚めだというような話…ジョーク?を思い出した。これは人は「外から見た自分」(そのものではなくそれを見…

語る建築家

アテネ・フランセ文化センターにて開催された山形国際ドキュメンタリー映画祭で観賞、チョン・ジェウンによる2011年作。がん闘病中の建築家チョン・ギヨンを追うドキュメンタリーで、本人が「講義に声はいらないと神様がもってったんだろう」と話す、何とか…

ミセス・ハリス、パリへ行く

街をゆくミセス・ハリス(レスリー・マンヴィル)の後ろ姿からのオープニングに、これが彼女のロンドンかと思う。ニューヨークに生まれデヴォンに移り住んだポール・ギャリコによるシリーズはMrs. 'Arris Goes to ParisにせよMrs. 'Arris Goes to New Yorkに…

ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー

オコエ(ダナイ・グリラ)はなぜヴィブラニウムがワカンダにしかないと思っているんだろう、そんなこと分からないのではと考えていたら、「鉱山の伝説が…」とのセリフから国による伝統教育がなされているのだと判明する(どんな物語なんだろう?)。そのしょ…

奈落のマイホーム

コメディに始まるが主題が展開するにつれシリアスになっていく韓国映画というのは結構あり、作り手の心情は分かるもののいまいち釈然としないことも多いけど、本作が本格的に笑わせにくる(演出が明らかにそうなる)のはアパートがシンクホールに落ちてから…

パラレル・マザーズ

上映前に(1960年代のフランスで意図せぬ妊娠に見舞われた大学生を描く)『あのこと』の予告が流れた。映画の題材として何かを扱う時に色々な形のそれがあった方がいいというのは私にはつまるところ今現在それをどう扱うべきかという問題なので、この映画は…

冬の旅

学生時代から四半世紀以上ぶりに初めてスクリーンで見て、やっぱりヴァルダってすごいな、いいなと思ったので感想を少し書いておく。オープニング、不吉なパイプのこちら側に歪んだ格好で倒れて死んでいるモナ(サンドリーヌ・ボネール)の体にしばらく誰も…

犯罪都市 THE ROUNDUP

冒頭、遠く逃げ込んだ異国の空き地にとめたバンに同胞を誘い込んで殺すカン・ヘサン(ソン・ソック)と、ソウルの路地で群集に写真を撮られながら立てこもり犯を捕まえ新聞にまで載るマ・ソクト(マ・ドンソク)、闇と光の対比。韓国の警察が韓国人を助けな…

ルームシェアリング/おひとりさま族/アンニョンハセヨ

コリアン・シネマ・ウィーク2022にてオンライン観賞した作品の記録。 ▼『ルームシェアリング』(2021年、イ・スンソン監督)はおばあさんグムブン(ナ・ムニ)と大学生ジウン(チェ・ウソン)の同居を描いた一作。ラストカットがうんこしている笑顔というの…