ルームシェアリング/おひとりさま族/アンニョンハセヨ

コリアン・シネマ・ウィーク2022にてオンライン観賞した作品の記録。


▼『ルームシェアリング』(2021年、イ・スンソン監督)はおばあさんグムブン(ナ・ムニ)と大学生ジウン(チェ・ウソン)の同居を描いた一作。ラストカットがうんこしている笑顔というのがこれまた韓国(笑)

窓がない部屋でさえ家賃が高くて借りられない、兵役に行かねばならない、といった若者のしんどい境遇の中で(この映画の態度としては「それはさておき」というべきか)限りなく強く明るく優しいジフンと、お金に執着し誰にも心を許さない一人暮らしのグムブン。それぞれの過去を小出しにしつつ終盤で二人がソファに並んでそのような生き方に至った理由…これまで何がどれだけ辛かったかを告白し合うというのは斬新な作りとも言え、双方、特にナ・ムニの演技で見せる。壊れた洗濯機に向かっての「みんな、行けばいい」。


▼『おひとりさま族』(2021年、ホン・ソンウン監督)は他人を寄せ付けないジナ(コン・スンヨン)の暮らしを描いた一作。『ルームシェアリング』では「孤独死」後の清掃の仕事に入った主人公がおじぎをする(ようになる)場面があったけど、こちらには意外な形のそれが見られる。

この手の映画にままあるように、ドラマやモッパンを見ながら食事するジナは真に一人が好きというわけではない。「教わった通りに私も教えてます」とのセリフから、社会に倣って心を開かないことで自分を守っているのだという信念が伺える。やがてその根にある父親へのわだかまりも見えてくる。そんな彼女が地方出身の職場の新人や怪我をしている時に引っ越ししようなどという(人手を借りる・貸すのが前提で生きている)隣人との出会いで変わっていく。何室もあるのに一部屋にこもっていたのが他の部屋にも足を踏み入れるようになる。大変に開かれた最後の展開はいいなと思ったけど、いまいちぴんとこない要素も多々あり(隣室の男性の孤独を「人肌恋しさ」とすることとか…実際そういう変換はあるのかもしれないけど…「孤独死」の記事にある「ひきこもりとおたく問題」との見出しとか)。


▼『アンニョンハセヨ』(2021年、チャ・ボンジュ監督)は死にたいと願う19歳のスミ(キム・ファニ)と看護師ソジン(ユソン )、彼女が勤めるホスピスの人々との交流を描いた一作。私の得意じゃないスタイルの映画だけど、今回上映された(うちの)三作のうちの一つとしてみると伝わってくるものがある。多くの、あるいはこうした機会に注目される作り手は若者の生きづらさに色々なやり方でアプローチしているんだと分かる。

死にたい者と死にたくはないがいつ死ぬか分からない者が相見えると、つまり死に近い者が複数になるとコメディ調の演出が可能になるというのは考えるとやはり面白い。しかし序盤は行き場のない者が独特な共同体に受け入れられるという古よりある物語、あるいは自分に合う場所に巡り合えた物語として見ていたら、終盤全く違う類の、私としては不要な要素に重点が移るので戸惑ってしまった(それゆえか三作の中で一番長い!)。