2022-03-01から1ヶ月間の記事一覧

ニトラム NITRAM

冒頭よりニトラム(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ)の、「自分の家」以外の場所で認められたいという欲求が描かれる。「オーストラリアの若者」が集う海へ行ってみるがセーターに革靴、サーフィンをしたこともないのだからぬかるみに立ちつくすだけ。子…

オートクチュール

「盗んだのはもちろん、あなた」とエステル(ナタリー・バイ)に突きつけられたジャド(リナ・クードリ)は一瞬固まった後に「あなたは私の世界を壊した」と叫ぶ。これは全くかけ離れた二人の女が互いの世界を壊し合う話である。ジャドは自分で動ける母親に…

スペインの祭/太陽と影/微笑むブーデ夫人/魔王

「フランス映画を作った女性監督たち 放浪と抵抗の軌跡」にて観賞。 ▼『スペインの祭』(1919年ジェルメーヌ・デュラック監督)は元ダンサーの女を愛する男二人の決闘の間に当の女は他の男と踊り続けるという話で、役名「気が狂った老婆」が実に意地悪でよい…

ストレイ 犬が見た世界

「人間は不自然で偽善的だから、犬に学ぶべきだ」というディオゲネスの言葉で今どき始まるとは外連あふれる映画である。でも嫌な外連じゃなかった。どのみち犬が主役の映画などと言う時点で不自然なんだから。 トルコでは1906年に行われた野犬駆除に反対する…

ガンパウダー・ミルクシェイク

サム(カレン・ギラン)とエミリー(クロエ・コールマン)、「二人ともが運転席」の車が邪魔する奴らを蹴散らして夜の街へ滑り出す作中唯一の空撮にステレオラブのFrench Disko…このカットの力みなぎる感は忘れ難い。「昔から、男達が『会社』でもって商売し…

オリヴィア

「フランス映画を作った女性監督たち 放浪と抵抗の軌跡」にて観賞。1951年ジャクリーヌ・オードリー監督作品、20世紀初頭のパリ近郊の女子寄宿学校を舞台に英国少女の愛を描く。オープニングは先に見た「ガールフッド」のラストシーンで背後にぼんやり映って…

ガールフッド

「フランス映画を作った女性監督たち 放浪と抵抗の軌跡」にて観賞。2014年セリーヌ・シアマ監督作品、パリ郊外に暮らすアフリカ系の16歳の少女の前進を描く。「(成績が悪いのは)私のせいじゃありません」というマリエム(カリジャ・トゥーレ)の訴えに教師…

ジャンヌ・モローの思春期

「フランス映画を作った女性監督たち 放浪と抵抗の軌跡」にて観賞。1979年ジャンヌ・モロー監督作品、12歳の少女マリーが祖母の住む田舎で過ごす第二次世界大戦直前のひと夏を描く。幾度か挿入される遠景が大変効果的、かつ私にはとても「フランス映画」らし…

美しき青春

「フランス映画を作った女性監督たち 放浪と抵抗の軌跡」にて観賞。1936年マリー・エプシュタイン、ジャン・ブノワ=レヴィ監督作品、グルノーブル大学で医学を学ぶ女子学生エレーヌ(原題「Hélène」)の数年間を描く。序盤のパーティの構図が見事で、このあ…

アリス・ギイ作品集

「フランス映画を作った女性監督たち 放浪と抵抗の軌跡」にて、「物語映画のパイオニアながら長らく忘れ去られていた」アリス・ギイのフランス時代の膨大な作品の中から13本(製作年は1898年から1907年まで、上映時間は1分から12分まで)を観賞。どれも面白…

アンネ・フランクと旅する日記

「アンネ・フランクの家」で特別展示中の「アンネの日記」を見るための大行列の誰一人として脇でテント生活をしている人のことを気にもかけないという、1分で言いたいことが伝わってくるオープニング。まずは1930年代にユダヤ系ドイツ人の多くがオランダへ移…

金の糸

先月ジョージア映画祭で見た同ラナ・ゴゴベリゼ監督「インタビュアー」(1978/感想)からはまず、それでも生きているのが楽しくて仕方ないといった感じを受けて心を掴まれたものだけど、この新作ではそのことにつきはっきりと言葉にされている。生を楽しむ…

ゴヤの名画と優しい泥棒

映画は主人公ケンプトン・バントン(ジム・ブロードベント)の罪状認否の場面に始まる。あなたは絵を盗んだ罪に問われているが有罪か無罪か、皆が絵を見る機会を奪った罪に問われているが有罪か無罪か。話の主眼は人々が彼のしたことを罪とみなすか否かとい…