オリヴィア


「フランス映画を作った女性監督たち 放浪と抵抗の軌跡」にて観賞。1951年ジャクリーヌ・オードリー監督作品、20世紀初頭のパリ近郊の女子寄宿学校を舞台に英国少女の愛を描く。

オープニングは先に見た「ガールフッド」のラストシーンで背後にぼんやり映っていた木々を分け入っていくようだった。男のいない森の奥なればこそ、冒頭の文の「神に与えられた、汚れなく純粋な愛の思い出」があり得たのだと言える。オリヴィア(マリー=クレール・オリヴィア)が足を踏み入れる学校は少女達の笑いや駆け足のエネルギーに満ち、揺れてはち切れそうだ。ユーモアと美味しそうな食べ物と共に。

彼女、ジュリー先生(エドヴィジュ・フィエール)とカーラ先生(シモーヌ・シモン)のどっちを好きになると思う?と生徒達が楽しげに賭けをしているのに付き合ってどうなるか見ていると…「答えられたから隣に来なさい」と呼ばれて向かう、あのカメラの陶然。息を継ぐ度に盛り上がる先生の白い胸。もう恋慕の沼に落ちる。やがて少女の愛の物語の背後にもう一つ、長い闘いを続けてきた大人の女の愛と人生が浮かび上がってくる。「あなたは勝者になれない、でも負けた時は…」

冒頭ジュリーは上階から生徒の体調などを気遣う言葉を掛けつつ降りてくる。よく見る、よく声を掛けるのは教員の基本である。中盤に宿題の返却に降りてくる際には少し立ち止まって見下ろし、降りてきて他の先生の物真似をした生徒によくないことだと諭す(でも物まね自体は確かに笑える、それがいい)。宿題に低評価を下されへそを曲げたオリヴィアと一緒の食卓で、出された夕食につき生徒の意見を求め「批評も大事」と教える。教師に大切なことは何かという、教員ものとしての面白さも案外あった。誘惑とも闘っている、女性の「人間的」な姿と一緒に映っているのがいい。