2023-06-01から1ヶ月間の記事一覧

模範社員

EUフィルムデーズにて観賞。2021年ベルギー、ヴェロニク・ジャダン監督作品。清掃商品を扱う会社に17年勤める40代のイネスとインターンで入ったばかりのメロディの朝から晩までを描く。今年公開された『アシスタント』(2019)の、システムの一部として差別…

マッチ棒くずし

EUフィルムデーズにて観賞。2021年ルーマニア・チェコ、エマヌエル・プルヴゥ監督作品。とある一家の娘マグダが父クリスティにもらったネックレスをボーイフレンドのユリアンと訪ねている病院で少女にあげてしまう…のに話は始まる。終盤マグダが言う「パパは…

To Leslie トゥ・レスリー

冒頭よりレスリー(アンドレア・ライズボロー)は誰にも目を合わせてもらえない。宝くじに高額当選するも6年後には無一文になってしまったアルコール依存症の彼女が金を貸してよ、遊ぼうよ、となりふり構わず男達に訴えても皆、目を逸らす。そんな彼女が自分…

苦い涙

ファスビンダーの『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』と同じく「優しくすると立場が弱くなる」という基本の確認に始まる本作は、オリジナルが男ならではのやり方で自分を支配した夫と別れてやったと語るペトラがハンナ・シグラ演じるカーリンを見るや権力者…

ムーン、66の問い

EUフィルムデーズにて観賞、2021年ギリシャ・フランス、ジャクリン・レンジュ監督作品。同性愛者であることを隠して生きてきた男は多発性硬化症によって体の自由を失いクローゼットのより奥に閉じ込められた。疎遠だった娘が帰国し父との苦しいダンスを通し…

探偵マーロウ

映画はヒトラーが独ソのポーランド占領について話した内容のニュースに始まり(このような映画を見るといまだに『マッチ工場の少女』の作中初の声が天安門事件のニュースだったことを思い出す)ナチスによる焚書の撮影所での再現に終わる。これにより作中の…

Rodeo ロデオ

話は主人公ジュリア(ジュリー・ルドリュー)がバイクを盗まれるのに始まる。彼女はポロシャツを着るような中年男性が売りに出しているバイクを盗む。後にまた盗まれると(今度は自分が乗るためにではないが)別の「金持ち」から盗む。弟に「200ユーロ出せば…

テノール! 人生はハーモニー

「置かれた場所」から抜け出すのには…主人公アントワーヌ(MB14)のような境遇の側にのみ…こんなにも苦しみが伴うという話である。その苦しみは境界の向こうの人々ゆえでもあるがこちら側の仲間ゆえでもある。当初は自身もお高くとまってと馬鹿にしていたオ…

もうひとつの楽園

アイルランド映画祭にて観賞。「アイルランドの長編映画を監督した初の女性」、ミュリエル・ボックスによる1959年作。夜の闇の銃撃、「あのことを頼む」と友に言い残し息を引き取る男。タイトル(This Other Eden)が出ると陽の中を駆ける馬の向こうに美しい…

恋するアナイス

EUフィルムデーズにて観賞、2021年フランス、シャルリーヌ・ブルジョワ=タケ監督作品。主人公が「望みを自覚する」のはここでは前提であり、冒頭よりしばらく、アナイス・ドゥムースティエ演じるアナイスに私たちはその一つのあり方、発露を見る。好きなも…

怪物

映画の序盤も序盤の、早織(安藤サクラ)の前で5年生の湊がペットボトルをぐじぐじやっている場面で不意に、例えば私が当事者である生理や妊娠の可能性につき、大ごとであると同時に大したことじゃない、その時々にどちらであるかを自分で決めることが大事な…

ウォーキング&トーキング/トーチソング・トリロジー

特集上映「サム・フリークス Vol.23」にて二本立てを観賞。いつもそうだけど、かなり面白い組み合わせだった。 ▼『ウォーキング&トーキング』(1996年アメリカ、ニコール・ホロフセナー監督)で描かれるのは少女時代からの親友二人を中心とした人間関係の進…

ウーマン・トーキング

話し合いから退いたスカーフェイス(フランシス・マクドーマンド)の「ゆるさなければ村からも天国からも追放される」で彼女たちのメノナイト信仰を少し覗き見ることができる。「今までゆるしてきたのに何故今回はそうしないのか」、果たしてこれまでのゆる…