映画

少女は夜明けに夢をみる

オープニングは黒いインクとローラー、少女更生施設入所時の指紋採取と登録が行われている。叔父の性的虐待が原因で家出してきたハーテレが隔離室に入れられる音と同時に、少女の誰かが題字を書いたと思われるタイトル「Starless Dreams」と、監督の名前メヘ…

ランド・オブ・ホープ

フィンランド映画祭2019にて観賞、2018年/フィンランド/マルック・ポロネン監督作品。今回見た「アウロラ」(感想)と本作、舞台は全く違うけれど共にセックスにおける女の意思と逃避のための酒の害悪がはっきりと描かれていた。立ち退き要素があるのも同…

スペインは呼んでいる

あるネタの最中にロブ・ブライドンが「好きな音楽家は」と問われてブルース・スプリングスティーンと返すのに、「Blinded by the Light」(感想)への彼の出演につき、悪目立ちしすぎだろ、何してるんだよと笑ってしまったものだけど、実際ファンなのかもと…

アウロラ

フィンランド映画祭2019にて観賞。2019年/フィンランド/ミーア・テルヴォ監督作品。映画は朝方、男の部屋から裸で逃げるように帰るアウロラ(ミモサ・ヴィッラモ)の姿に始まる。よくあるオープニングだ、この一幕から彼女がセックスを、敷衍してその他の…

グレタ GRETA

予告には全くもってそそられなかったけれど、見てみたら、流麗、寂しいけれどしなやか、音楽はベタながらわざとらしくなく品があるといういつものニール・ジョーダン映画だった。エンドクレジットによると撮影はアイルランドとカナダとアメリカで行われたそ…

Blinded by the Light

東京国際映画祭にて観賞、2019年/イギリス/グリンダ・チャーダ監督。1987年のロンドン郊外、ルートンを舞台に、ブルース・スプリングスティーンの音楽に出会って変わってゆくパキスタン系青年の姿を描く。主人公ジャベド(ヴィヴェイク・カルラ)が高校の…

人生、ただいま修行中

ニコラ・フィリベールがフランスの看護学校の学生達を撮ったドキュメンタリー。原題は「De chaque instant」(全ての瞬間から)だそうだけど、邦題の「ただいま修行中」とは奇妙だ、仕事をする限り修行は続くものじゃないかと思いながら見始めるも、面白かっ…

最近見たもの

▼ドリーミング村上春樹東京の夜景と一体になって翻訳に勤しむ、励む、いや何と言えばいいか、ともあれ翻訳家メッテ・ホルムの後ろ姿に続き、デンマークでの彼女のラジオ出演の様子が映る。「日本人にとって平行世界は身近なものなのですか」。村上春樹の本を…

若草の祈り/わが青春の輝き

特集上映「サム・フリークス Vol.6」にて「文芸フェミニスト映画2本立て」を観賞。 ▼「若草の祈り」(1970年/イギリス/ライオネル・ジェフリーズ監督)はイーディス・ネズビットの「鉄道きょうだい」が原作。助け、助けられることが人の営みだと言っている…

ボーダー 二つの世界

「虫を食べるなんて気持ち悪い」 「誰が決めた?」 「みんなが決めた」(以下「ネタバレ」あり)ティーナ(エバ・メランデル)がコオロギを手に取り触感を楽しみ自然に返す最初の場面と、同様に手に取り我が子に食べさせる最後の場面は、境界線を他者から引…

蜜蜂と遠雷

原作は未読。小説の通りなのだろうか、松岡茉優演じる亜夜の二次予選の際のドレスがよかった、背中の筋肉の動きがありありと見えるのが素晴らしかった(しかも左側だけ!)。自分のは勿論他人のも、ピアノを弾いている時の裸の背中なんて見る機会がないから…

イージー・レッスン 児童婚を逃れて

UNHCR WILL2LIVE映画祭2019にて観賞。2018年/ドロッチャ・ズルボー監督/ハンガリー制作。娘を児童婚から救わんとする母の尽力で単身ソマリアからハンガリーに渡ったカフィアの日常を追ったドキュメンタリー。ソマリアでの暮らしについて「周りにいる男性は…

難民キャンプで暮らしてみたら

UNHCR WILL2LIVE映画祭2019にて観賞。2015年/クリス・テンプル、ザック・イングラシー監督/アメリカ制作。アメリカ人映画製作者がヨルダンのザータリ難民キャンプに滞在し日常を記録したドキュメンタリー。見るまで気付かなかったんだけれども、製作者は56…

ナディアの誓い

UNHCR WILL2LIVE映画祭2019にて観賞。2018年/アレクサンドリア・ボンバッハ監督/アメリカ制作。ISISに家族や同胞を殺され性奴隷となったナディア・ムラドの日々を追ったドキュメンタリー。映画は移動中のナディアと共に自撮りしようとする男性の群れに始ま…

ミッドナイト・トラベラー

UNHCR WILL2LIVE映画祭2019にて観賞。2019年/ハッサン・ファジリ監督/アメリカ、カタール、カナダ、イギリス制作。タリバンに死刑宣告を受けた映画監督が家族で亡命する日々を自ら撮ったドキュメンタリー。出発前に監督がスマートフォンを構えた自身を鏡に…

パリに見出されたピアニスト

ピアノの単音がオーケストラとなり、パリ北駅のめまぐるしい雑踏の中、「ご自由に演奏を」ピアノでマチュー(ジュール・ベンシェトリ)がバッハの「プレリュードとフーガ ハ短調 BWV847」を弾いている、一瞬遅れてバッハの前奏曲だと気付く。遠くから見つめ…

エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ

映画はケイラ(エルシー・フィッシャー)の配信動画に始まる(そうか、「ズーム」はそうやればいいのかと気付く・笑)。ボー・バーナム監督がジョン・ヒューズの映画は世代的に心に響かないと話す記事を目にしていたので(「フェリスはある朝突然に」から)…

見えない目撃者

オリジナルは見ていないんだけれども、これは他人を気に掛けるという最大の美徳を持つ四人がチームとなり「いなくなっても誰も気にしない」弱者を踏み潰す悪と闘う物語である。だからこの映画で最も大切な場面は主人公なつめ(吉岡里帆)の「うちに来る?(…

アド・アストラ

「リマ計画」を知っているかと問われたロイ(ブラッド・ピット)がまるで第三者のように返答するも父が生きていると聞くと相手の声がひととき遠くなる、意識が制御下から離れそうになるのは、冒頭の事故がその比喩だったかのように思われた。冷静に対処して…

レディ・マエストロ

1930年にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団にてデビューした女性指揮者アントニア・ブリコの実話を元に制作。映画の最後に出る文章を締める「0% are women」が、「私達が才能に性差はないと示したことをあなたは覚えているか」と訴えかけてくる。厳しいこ…

平日の記録

東京都写真美術館にて、展示室で開催中の「しなやかな闘い ポーランド女性作家と映像 1970年代から現在へ」。 これは楽しかった、長居してしまった。変な言い方だけど豪奢な学園祭のような雰囲気だった(豪奢というのは椅子などしっかりしてるから)。「DAVI…

サウナのあるところ

脚をあげている女の見られる映画は大抵面白いものだが、この映画もそれで始まる。サウナでくつろぐ、50年以上一緒の夫婦。夫が妻の背中を流してやるのとキスを最後に作中のサウナに女は現れず、以降は男達が一列に横並び、ロッカールームで向かい合いと色々…

帰れない二人

顔、顔、顔のオープニングの後、21世紀と共に産声を…とは言わないまでも世紀末に生を受けたであろう子がふと目覚める。市街地から炭鉱の町に向かうバスを皮切りに三つのパート全てが乗り物で始まる(間にも絶え間なく乗り物が出てくる)乗り物映画だが、これ…

フリーソロ

面白かった、ドキュメンタリーの普遍と特殊がここにある。お馴染みジミー・チン(妻のエリザベス・チャイ・ヴァサルヘリィと共同制作、兼監督兼撮影監督)の「僕らの撮影がアレックスに影響を与えることはないと自分に言い聞かせていた」(続く言葉は「断念…

ヒンディー・ミディアム

この二時間強の、教育や貧困といった社会問題を扱いつつも一大叙事詩のような趣の新鮮さ…器用な観客でない私には見づらさにも繋がったけれど…は、私がインド映画を見つけないからなのかインド映画でもあまり無いタイプだからなのか。娘の受験のために名門小…

おしえて!ドクター・ルース

「愛情深く真摯」「権威ある話し方を心掛けている」などと言われるルースの仕事ぶりがやはりまず素晴らしい。相手をしっかり見ながら話を聞き、シンプルかつ的確な内容を返す。映画はセックス・セラピストである彼女の現在の、あるいはこれまでの仕事を見せ…

ガーンジー島の読書会の秘密

まず私にはやりたいことがあるという話である。冒頭の1946年「本を書いて稼いだお金でロンドンの皆に住宅を贈ったらどう」「愛する人に花を贈ることで花屋の仕事を作っている」などの冗談めかしたやりとりがなされるが、そう、ジュリエット(リリー・ジェー…

グッド・ヴァイブレーションズ

冒頭、テリー・フーリー(リチャード・ドーマー)がベルファストの「爆弾横丁」に店を開くにあたって持参したレコードで殺し合う二派を「買収」する場面を何とも面白く思ったものだけど、ここに彼のずっと変わらぬ芯があるのだった。素晴らしい音楽は争いを…

ディリリとパリの時間旅行

映画は「役割」を果たしているのを「見られ」ている少女の姿に始まる。「僕らの言葉が話せる?」「あなたよりうんと上手にね」と答える彼女、ディリリを主人公としたこの映画はまず、世界に中心などないと言っている。フランスにとって流刑の地であるニュー…

ピータールー マンチェスターの悲劇

冒頭に置かれたウェリントン公の補佐官ビング将軍と内務大臣の「軍人として育てられたので政治に関心はありません」「いいことだ、私もそうだ」とのやりとりで、(国の軍隊もおそらく義勇軍も)軍とはどのようなものかがまず語られる。トップは自身の愉しみ…