映画

海辺の彼女たち

ベトナムからの技能実習生三人が真っ暗な中を逃げ出す冒頭より地下鉄、フェリー、電車、バスと乗り物が数多出てくるが、その場その場で必要に迫られて乗るだけのそれらはどこにも繋がっておらず、日本語のみのアナウンスが恐ろしく響く。海辺に辿り着いた彼…

街の上で

一人暮らしにしては冷蔵庫、でかくね?からの主人公・荒川青(若葉竜也)の「おれは別れないからな」。この映画で男の口から二度出るこの言葉は私にとって暴力に繋がり得るものなので、心が少し縮んでしまった。青の働く古着屋で女性が口にする「まだ好きな…

スプリー

「ストレンジャー・シングス」のスティーブことジョー・キーリー主演、父親役にデヴィッド・アークエット。「誰も見ていないところで木が倒れたなら、倒れたと言えるのか?」をこういう映画で聞くとはと思ったけれど、言い得て妙か。こういう題材だとスプリ…

約束の宇宙

アリス・ウィノクールの映画は「裸足の季節」(脚本)、「ラスト・ボディガード」、本作いずれも女が家から出る話である(「ロシアはすごく遠いけど地球にある」じゃないけど、本作での家とは地球のこと/「博士と私の危険な関係」は未見)。異なる主題を扱…

戦場のメリークリスマス

4K修復版の2K上映を観賞。画面、なんてきれいなんだ!という感動は慣れにより数分で消える、ボウイの登場時には蘇ったけれど。見たのは何年ぶりだろう、思ったことをちょこっと書いておく。▽ロレンスがヨノイに対しセリアズについて「彼は掃射兵で…そうだな…

AVA エヴァ

オープニングクレジットのコモンに殺し屋仲間の役だろうと見ていたら、主人公エヴァ(ジェシカ・チャステイン)の妹ジュディ(ジェス・ワイクスラー)の恋人マイケルとして登場。彼のギャンブル依存症をそこから助け出さねばならないもの、悪いのはそれを利…

アンモナイトの目覚め

「明るく賢い元の君に戻ってほしい」と似たようなセリフを最近聞いたな、私ならこんな男とは速攻別れると思ったな、そうだ「ミナリ」のスティーヴン・ユアン演じる父親だ。メアリー・アニング(ケイト・ウィンスレット)の「協会って全員男よね」に「でもあ…

パーム・スプリングス

サラ(クリスティン・ミリオティ)とナイルズ(アンディ・サムバーグ)が揃いの服でバーに飛び込み踊る姿に、私は近年映画を見ながら「誰かと付き合うって自分達を世界から閉ざすんじゃなく世界に向かって開くってことなんだ」とよく考えるんだけど、この場…

ブータン 山の教室

典型的な「教師、都会から赴任」ものかと思いきや、教育庁のスタッフが「世界一僻地にある学校」と言うだけあって現地に着くまで時間のかかること、何と8日間。話は旅から始まるのだった。主人公ウゲンの携帯はガサまでで圏外となりiPodの電池も切れる。ただ…

平日の記録

ファミレスの新デザート。 デニーズ×GODIVAのチョコレートフレンチトーストは、チョコ好きだけどチョコ味ばかりだと飽きてしまう私にはぴったりだった。初めてのチョコレートプリンも美味。 ロイヤルホストのストロベリーパイ・ア・ラ・モードは案外ジャンク…

最近見たもの

▼ロード・オブ・カオスネタだよネタ、が通じなかったという意味では昨今の色々を想起させるのと同時に、普遍的なものなんだろうか、男性の青春が描かれている。まずは同性との関係を上手く築けない男性の話である。終盤恋人に「競争意識があるんじゃ」と指摘…

サンドラの小さな家

サンドラ(クレア・ダン)は、長女エマがしてくれたベッドサイドストーリーと次女モリーのレゴ遊びから自分達の家を作ろうと思い立つ。「聖ブリジットはコミュニティセンターを建てて皆を助けました」「そのお話、どうやって覚えたの?」「先生がしてくれた…

ノマドランド

年越しの花火を手にバンを出ておめでとうと歩き回るファーン(フランシス・マクドーマンド)。受け止める人の姿は映らない、いるか否かも分からない。でも善意を世界に放つんだ、それが今、世界に必要なものなんだ、という映画である。ヴァルダやケリー・ラ…

水を抱く女

「形態は機能に従うと言いますが、(2020年にオープンした)フンボルト・フォーラムの姿は18世紀の王宮そのままです、まるで進歩は不可能だとでも言うように。それも一つの意見でしょう」この映画を端的に表しているのがウンディーネ(パウラ・ベーア)によ…

クイーンズ・オブ・フィールド

「野球少女」(2019年韓国)もそうだったように、描かれるのはスポーツの勝ち負けではなく、女の選手は存在してもよいのかと考えてしまう男性側の問題である。不思議な設問だが、本作でカトリーヌ(ロール・カラミー)の夫が「なぜだか分からないが女のチー…

巡礼の約束/ラモとガベ

岩波ホールで開催中の「映画で見る現代チベット」にて観賞。公式サイトに「チベットの女性が見えてくる」とあった二作を続けて見てみたところ、どちらも男の映画だった。「女性問題」とは男の問題なのだと実感できた。▼「巡礼の約束」(2018年/ソンタルジャ…

ミナリ

「家」を目指す2台の車。引っ越し会社のトラックで先達している父親「ジェイコブ」(スティーヴン・ユァン)の姿は現地まで明らかにならない。降り立った彼と母親「モニカ」(ハン・イェリ)の夫婦間では韓国語、韓国へ行ったことのないアンとデヴィッドの姉…

最近見た韓国映画

▼夏時間私にはあまりに何もなさすぎた。何も起こらないという意味じゃなく、例えば主人公オクジュがお金を欲しく思う気持ちや兄と妹の間の金銭的なわだかまりなどの色々がその場面以前以降にも存在しているように感じ取れず、全てがその場限りに思われた。子…

ゴー・フォー・シスターズ/子供たちをよろしく

特集上映「サム・フリークス Vol.11」にて二作を観賞。 ▼「ゴー・フォー・シスターズ」(2013/アメリカ/ジョン・セイルズ監督)は保護観察官の女性がかつての女友達と共に行方不明になった息子を探す物語。 全てがジョン・セイルズらしい映画だったけれど…

あのこは貴族

原作未読。東京タワーが欠けてはいるがはっきりと見えるベランダで並んでアイスを齧る女二人に、「私をくいとめて」のローマでやはり横並びで花火を見る女二人が重なった。その前の、美紀(水原希子)の「狭い部屋って落ち着くよね」に対する華子(門脇麦)…

ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日

「私達もこんなふうになれるかな」。関係を一方がどうこうするなんて言語、あるいは非言語でもって交流できる人間同士だって無理なのに、ホワイトライオンのチャーリーに対してミアは言う。子どもだから、とも考えられる。ミアのこの思いと実際の関係はどう…

孤島の葬列/ミナは歩いてゆく

イスラーム映画祭6にて観賞。 ▼「孤島の葬列」(2015年タイ、ピムパカー・トーウィラ監督)はムスリムの姉弟とその友人が深南部に暮らす伯母を訪ねるために旅をする話。「伯母さんは優しい人だった」「父さんは虎より怖いと言っていた」という姉ライラーと弟…

シェヘラザードの日記/ラシーダ

イスラーム映画祭6にて観賞。 ▼「シェヘラザードの日記」(2013年レバノン、ゼイナ・ダッカーシュ監督)はドラマセラピーに参加する女性囚たちを描いたドキュメンタリー。よいドキュメンタリーの多くが「『今』はどうなっているのか」と考えさせるものだけど…

春江水暖 しゅんこうすいだん

祝いの席で母親が四人の息子に金を渡し、次いで孫達にというところで倒れてしまうのが幕開け。気付けばずっと金の話である。この映画ではその発端を、現在(2019年制作時)32歳だという教師のジャンが書いている小説の舞台である90年代…ということは四兄弟が…

すばらしき世界

自分は一匹狼だと強調する三上(役所広司)は、単独で生きることにこだわり生活保護を忌憚する。役所でのやりとりに倒れたり下の部屋の男にキレたりするのもそのことに触れられた時である。一方で例えば弁護士(橋爪功)の妻(梶芽衣子)の「ミシンが重かっ…

マダム

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2019年スイス、ステファン・リートハウザー監督。これまた妙のあるドキュメンタリーだった。「おちんちん」に始まるホームビデオ、長じては主に写真に映し出されているステファン自身が…

思春期 彼女たちの選択

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2019年、セバスチャン・リフシッツ監督。フランスの田舎町に暮らす二人の少女の13歳から18歳までを収めたドキュメンタリー。映画は中学二年生になったアナイスとエマが教室で並んで先生…

花束みたいな恋をした

映画「デート&ナイト」の冒頭、レストランで近くの夫婦を茶化して喋り倒すティナ・フェイとスティーヴ・カレルが私は大好きなんだけど(これはアメリカ映画でよく見られる「気の合う二人」の描写、彼らの場合は「倦怠期」だけども)、それ以前の二人はどん…

わたしの叔父さん

冒頭の一幕、それまで半ば隠されていたクリス(イェデ・スナゴー)の顔が初めてはっきり映るのはトラクターの運転席から叔父さんを見る時。朝から視線を合わせることもなく互いにやることをやっている相手への、「心配でたまらない」という瞳が映画の後もな…

フェリチタ!

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2019年、ブルーノ・メルル監督。住居を持たずに生きる一家の子、11歳のトミーが待ち望む新学期前日の物語。「音楽をかけなきゃな、最高のを」の後の「Felicita(フェリチタ=幸福)」が…