映画

朝が来る

ウォーターフロントの30階から眼下に眺める海と広島で仲間と散歩する海とが繋がっているということは佐都子(永作博美)と朝斗の母子の会話でも強調されるが、つまりはそういう話である。電話を受ける側に始まり電話を掛ける側の描写に至ってやっと分かった…

エイブのキッチンストーリー

「子どもを働かせてはいけない」という実際問題はさておき、エイブ(ノア・シュナップ)自身はチコ(セウ・ジョルジ)の元で料理を学ぶことを「トレーニング」と言っている。人生において料理は仕事じゃない、というようなことを言っている映画を最近見たな…

マイアミ/サマー・フレンズ

「フィンランド映画祭 アンコール」にて観賞。 ▽「マイアミ」は「アキ・カウリスマキが愛するフィンランドの映画」特集で「僕はラスト・カウボーイ」(2009)を見たことのあるザイダ・バリルート監督の2017年作。上映前に流れた監督の挨拶映像で「複合的な内…

リトル・ウィング

「フィンランド映画祭 アンコール」にて観賞。2016年フィンランド、デンマーク/セルマ・ヴィルフネン脚本監督。序盤に置かれた学校で父の日のカードを書かされるくだりを、この映画は批判的には描かない。主人公ヴァルプがこっそり住所を調べて「本当の」父…

詩人の恋

「タクシーに乗れば空港へ行けるのに」。アメリカ映画などでは大抵バスはどこかへ旅立つ乗り物だが、ここでは行って帰るだけの、「遠くへ行きたい」と願うテッキ(ヤン・イクチュン)にとって悲しみと共にある乗り物だ。悲しみを糧にする詩人の彼はそれ故そ…

おらおらでひとりいぐも

桃子さん(田中裕子)の「地球の記憶」の映像に続く炬燵にお茶とみかんの彼女の姿に、雨の晩にこうして屋根があるところに居られるって素晴らしいと思う、文明の元では保証されるべき、生き物の根源的な幸せとでもいうか。そこから「おらだばおめだ♪」が音楽…

ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった

なかなか時間が進まないなと見ていたら、一、二枚目のアルバムの後に体感としてはすぐに「ラスト・ワルツ」の話になる。私のような無知な者が馴染みのある部分だけじゃないかと思うも、序盤に語り手のロビー・ロバートソンが口にする「あの頃の僕らは美しか…

スタートアップ!

脚本監督のチェ・ジョンヨルの前作「グローリーデイ」(2015)は、韓国の男性は美しく生まれるがみな汚れてしまうという話だった。原作付の本作では(言わずとも誰もが知っている)その理由がまずはっきりと口にされる。「ファイナンシャルって何だか知って…

最近見たもの

▼キーパー ある兵士の奇跡ジョン・ヘンショウの顔を見ながらふと、そういやこれ、イギリス・サッカーものだったと気付く(知っていたけど忘れていた)。更に話が進むうち、これは死なず生き延びた人間の話なのだと分かる。語弊があるかもしれないけれど、こ…

薬の神じゃない!

雨の晩に主人公チョン・ヨンが言い放つ、それを口にしたらおしまいの「おれは患者でもないのに」。後に義弟のツァオ刑事が患者にすがられる際の「誰だって何時この病気になるか分からないよ」なんて、言わなくていいはずの言葉なのだ。社会が言わねばならな…

アイヌモシリ

何かを見つめる少年の顔のアップに次いで彼の母親(と後に分かる、クレジットで「本当の」母親だと更に分かる)が観光船でアイヌの楽器を演奏する姿。お客の側で見始めたのが、続く観光アナウンスの中で朝食をとる少年の場面でこの地での、「普通じゃない」…

ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ

これこそ見た人により反響が異なる映画だろうけど、私は前日のニュースで知った最高裁の判決を重ねてしまった。正社員として働くのは「正当」、お金を払って住むのは「正当」、でもそうしたことの上に位置する何らかは正当な人々とそうあれない人々との格差…

82年生まれ、キム・ジヨン

キム・ジヨン(チョン・ユミ)が「みな他人事で、私だけが頑張ってる」と言う時、そうだ、向かいに心配そうに座る夫チョン・デヒョン(コン・ユ)こそいつだってそうだったとつくづく思う。「子育てを手伝う」ってあんたの子なのに?「育児休暇を取るのは君…

僕の名はパリエルム・ペルマール

インディアンムービーウィーク2020にて観賞。2018年、マーリ・セルヴァラージ監督。ダリト出身の「弁護士志望、パリエルム・ペルマール」は法科大学で中間カーストのテーヴァル出身のジョーと親しくなるが、彼女の親族から酷い仕打ちを受ける。カースト差別…

マーティン・エデン

映画はバターにナイフが入っていくかのようにすっと滑り出す。船乗りの男マーティン・エデン(ルカ・マリネッリ)は令嬢エレナ(ジェシカ・クレッシー)の家を初めて訪れた日にドビュッシーの「パスピエ」を三度聞く。始めはおそらく彼女が別室で弾いている…

結婚は慎重に!

インディアンムービーウィーク2020にて観賞。2020年、ヒテーシュ・ケワルヤー監督、アーユシュマーン・クラーナー主演。同性間の性行為を「不自然な違法行為」と定めた刑法377条につき、2018年にインドの最高裁判所が憲法違反の判決を下した事実が下敷きにな…

マティアス&マキシム

冒頭、同年代の男ばかりの集まりでマティアス(ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス)の「ケーキに火をつける、じゃなくろうそくに火をつけるだろ」という発言が肴にされる(撮影までされておりスマホで映像を見せつけられる)が、そのうち、「言葉警察」と…

メイキング・オブ・モータウン

ベリー・ゴーディいわく「おれの仕事は才能を最大限、引き出すこと」。スモーキー・ロビンソンを作詞作曲の生徒の第一号とする彼が自身を先生になぞらえることもあり、校長の口から語られる学校の誕生から終焉までの物語といった感もある。エンドクレジット…

ブリング・ミー・ホーム 尋ね人

映画の序盤、ジョンヨン(イ・ヨンエ)とミョングク(パク・ヘジュン)が車で拾う青年スンヒョン(イ・ウォングン)に何て素敵な笑顔だと思っていたら、後に自分の馬鹿さ加減を知ることになる。彼はそれを「捨てられないために」身に着けたのである。日頃、…

スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話

世界一タフじゃなきゃ務まらない仕事人の話に、ヴァンサン・カッセルとレダ・カテブがはまっていた。斜めに座って監査局の調査人を迎えたブリュノ(カッセル)いわく「それじゃあなぜ皆はここに連絡してくるんだ、頼るんだ」。映画の終わりに出る「代替手段…

バッド・レピュテーション

シネマート新宿で開催中のロックドキュメンタリー特集「UNDERDOCS」にて観賞。ジョーン・ジェットの人生をまとめた2018年作品。▽オープニング、親にねだってギターを買ってもらったという話に合わせて女の子がギターを抱える広告写真。ジョーンが実際に見た…

マイアミ・ブルース/サム・フリークス

特集上映「サム・フリークス Vol.9」にて二作を観賞。 ▼「マイアミ・ブルース」(1990/アメリカ/ジョージ・アーミテイジ監督)は詐欺師の男と大学生の女のしばらくの物語。「何歳?」に始まり「『ペッパー』?」の笑いで締められるジュニア(アレック・ボ…

行き止まりの世界に生まれて

そうなんだよね、山の映画やスケートボードの映画はカメラマンもその達人なんだよね、しかもこの映画は撮影している監督が仲間なんだよねと見始める。ロックフォードをスケートでゆく青年達は、街中に人どころか車もまばらなためか(早朝だからかと思いきや…

シリアにて

「換気の悪さに息が苦しくなる映画」というのがある。近年じゃあれもそうだった、と思い出してみればこれも元シリア兵の監督がシリア人移民・難民の労働者を描いた「セメントの記憶」だった。本作では窓を開けてもいるし換気扇だってありそうだけど、セリフ…

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

「リフトの客評価が低い」モリー(ビーニー・フェルドスタイン)は、エイミー(ケイトリン・ディーヴァー)以外の運転する車に乗るのが苦手である。「私達には多面性がある、皆に私の色んな魅力を知ってほしい」と願いつつ自分は周囲を見ようとせず、世界を…

週末の記録

土曜日は紀尾井町のプリンスギャラリー最上階のオアシスガーデンにてハワイアンフェア。注文したのはココナッツ風味のフライドライスに海老をのせたシュリンプアントレと、蜂蜜とこれまたココナッツシロップをかけるハワイアン・ダッチベイビー。海老など特…

思い、思われ、ふり、ふられ

映画が始まるや、四人それぞれの心の声を押し出してくる作りが異様に感じられ驚かされる。でも次第に分かってくる、これは「口に出すか出さないか」の話なんだって。尤も高校生の彼らの「口に出すか出さないか」問題は四人の間、それこそタイトルの「思い、…

ポルトガル、夏の終わり

始まると黒いスクリーンにクレジットが出てまず音だけが、という映画はよくあるけれど、ここでは白に黒字。眩しさに、目を覚ましてよく見てねと言われているようだと思った。私が確認したのは、時間と場所を共にする時、人はそれぞれ局面を持ち寄っているの…

母性

第3回東京イラン映画祭にて観賞。2017年、ロガイエ・タヴァッコリー監督。今回の上映作のうち女性監督の作品は二本、いずれも女だけの家の物語だった。イラン・イラク戦争を描いた「別荘の人々」(感想)に対し、こちらは現代のヤズドが舞台。姉妹とその叔母…

別荘の人々

第3回東京イラン映画祭にて観賞。英題「Villa Dwellers」、2016年、モニール・ゲイディー監督。イラン・イラク戦争の最中、軍人の妻子達が疎開施設となった前線近くの別荘に待機する姿を描く。映画は「トヨタのハイエース」が別荘に向かう道のりに始まる。運…