映画
EUフィルムデーズ クラシック・セレクションにて観賞。1969年リトアニア、アルーナス・ジェブリューナス監督作品。私には母親に片思いする女の子の話に思われた。母親とて娘を愛しているが、暗い窓辺で自分を待っている彼女に帰るなり「今日は誰か来た?」、…
EUフィルムデーズにて観賞、2025年アイルランド、ウクライナ、フランス制作。アイルランドのガー・オルーク監督がウクライナ、オデーサ近郊の塩湖に面するサナトリウムの2023年の夏を収めた作品。ソ連時代に建てられた施設の現在の稼働率は20パーセントもい…
刺繍アーティストのサル・サランドラにインスパイアされた作品とのことで、情景を重ねていくスタイルは刺繍のようだと思った。どこかへ向かう、何かが結実するというより、存在する幾つもの真実を提示してくるような映画。アリスがモチーフの刺繍があったけ…
ワヒド(ワヒド・モバシェリ)が医者へ行かないのは、殴られて傷ついた腎臓と共にある状態から抜け出せないからだろう。私だって身近にいたら病院へ引っ張って行きたい程だろうけど、当人以外が決められることではない。彼は初対面のシヴァ(マルヤム・アフ…
イタリア映画祭にて観賞、2025年グレタ・スカラーノ監督作品。『山逢いのホテルで』(2023年スイス・フランス・ベルギー)『私のすべて』(2024年フランス)などは障害のある息子を一人つきっきりで育てる母親が生き方を見直す話だったが、これは「面倒を見…
イタリア映画祭にて観賞、2025年パオロ・ヴィルズィ監督作品。雪が降りしきる中、荒れ果てた厩舎で一人その日を暮らすアドリアーノ(ヴァレリオ・マスタンドレア)。弁護士事務所の同僚ジュリアーナ(ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ)は「人と関わればうつ…
最初に提示される第3章の終わりには、この章が「何」であるかがはっきりする。私は子どもの頃からあのように感じているから原作小説は知らないけれど見当がつき、とはいえ解釈の違いがあるからこそ色々と面白かった。例えば教師のマーティー(キウェテル・イ…
イタリア映画祭にて観賞、2025年ラウラ・サマーニ監督作品。「あいつは二人のキスを見て動揺したんだ、お前のせいだ」「なんで私だけ?二人でキスしたのに」(自動ドアの向こうにハグで慰め合う男二人、うち一人がキスの相手)に端的に表れているように、男…
イタリア映画祭にて観賞、2025年リッカルド・ミラーニ監督作品。いつどこにでも起こりうる話とはいえどうしても『ローカル・ヒーロー』(1983年アメリカ)が思い出され、最後にバート・ランカスターがヘリで到着して一件落着なんでしょ?と見ていたんだけど…
イタリア映画祭にて観賞、2025年マルゲリータ・スパンピナート脚本監督作品。「浜辺の貝はひとりぼっちだったけれど波と風の音に育てられた」というお話を大好きなベビーシッターにせがんでいた少年ニコ(マルコ・フィオーレ)は、彼女が結婚する夏、高齢の…
「水俣病公式確認70年によせて 土本典昭監督特集」で『水俣 患者さんとその世界』と続けて観賞。チッソ水俣工場を見下ろす丘で聞く「チッソの歩みは資本主義と日本の歩みそのもの」。朝鮮の興南工場の設立には大使(政府)が介入して二束三文で土地を買い叩…
後輩の運転する車の鏡を見ながらようじで歯をせせるのに登場するイ・ジョンウンとは少し前までそうそう見られなかったものだ(大好きなドラマ『デッドロック 女刑事の事件簿』(2023年オーストラリア)などに比べたら全然小綺麗なものだが)。彼女演じる中年…
シリアでは多くの子どもが破壊や占拠により学校を失ったが、イギリス北東部のかつて炭鉱があった町でお腹を空かせ「私がいなくても学校には関係ない」と帰ってくるリンダもまた学ぶ機会を奪われていると言える。ポテトチップスだけの食事で倒れた彼女を送っ…
シアター・イメージフォーラムのギィ・ジル特集上映で長編デビュー作と次作を続けて観賞。『海辺の恋』(1964年フランス)がその時々の自分に合う場所を求める男達の話なら、『オー・パン・クペ』(1967年フランス)はそんな場所などなかったら?という話で…
「ペルーの公用語の一つであるケチュア語の映画としてペルー映画史上最高の興行収入を記録した」との宣伝文に惹かれて見に行ったんだけど、それこそが一番の肝だった。自分の言葉の物語を欲する話、それを映画の中でも外でも実現する話なんだから。アンデス…
サム・フリークスVol.34にて「ライヴ映画2本立て」を観賞。 ▼『スターストラック わたしがアイドル!』はジリアン・アームストロング1982年、オーストラリアでの二本目の監督作品。オープニング、電話ボックスの中のジャッキー(ジョー・ケネディ)の左右違…
「ドラゴンじゃなく獅子」と後で息子二人(車の後部座席の片側にくっついて座っている)に訂正される行事の会場の隅にぼんやり腰かける、居場所のない男アレックス(ウィル・アーネット)。それがひょんなことからコメディクラブで喋って居場所を得る。私は…
それぞれの家でお前には将来などないと…女であるアグネス(ジェシー・バックリー)は結婚できないと、男であるウィリアム(ポール・メスカル)はろくな仕事ができないと…軽んじられている二人がパートナーになりそれらを達成する話である。出会いの一幕の後…
本作のソウル国際芸術団舞踊学科という架空の場での群舞は、女子達の幽霊談にも表れているように、「皆と同じことをしながら皆より秀でていなければならない」という韓国の子ども達の境遇のように思われた。皆が親に言われるまま頑張る中、母親のためだけど…
キース・ジャレットの『ザ・ケルン・コンサート』が録音された公演の立役者だった当時18歳のヴェラ・ブランデスに初めて光を当てた作品…と見始めたら、登場するのはスザンネ・ウォルフ演じる50歳のヴェラ。計算しても「今」ではないし何故と見ていたら、娘を…
「東京を観光しても分からないリアルな生活が巨匠の映画を見ると分かる」…とは佐藤忠男が言うわけではないが、確かに幾つかの作品が脳裏に浮かぶ。さすればこのドキュメンタリーの柱の一つである、彼が一番好きな映画だという『魔法使いのおじいさん』(1979…
映画監督が夢のダグ(ジャック・ブラック)が自身の書く脚本について言う「テーマはジェネレーション・トラウマだ」に売れない俳優のグリフ(ポール・ラッド)は「皆好きだもんな!」。皆好きなのか、と思うと同時にもしそうなら、そうとも言えるけど見たこ…
冒頭の一幕、働けと呼ばれるも豚小屋になかなか行かない少女エリカは父親にぶたれる。彼女がこっそり何度も入るのは「役に立たない」もので満ちた部屋だ。片脚のフリッツが日がな寝ているベッド、彼が描いた自身の脚のスケッチ。女中のトゥルーディが拭き上…
母ソヨン(チェ・スンユン)がお昼に持たせたキンパと汁を捨て美味しかったと嘘をつき、明日からは皆と同じ物をと頼んだ息子ドンヒョン(ドヒョン・ノエル・ファン)は、デービッドと名を変えられ16歳になると(イーサン・ファン)更に「皆と同じ」になるた…
母親を亡くした一家の元に現れた、悲しみの権化であるカラス(エリック・ランパール、声はデヴィッド・シューリス)は「女王が死に、王は息子達を見捨て、国は荒廃した」という物語を父(ベネディクト・カンバーバッチ)に飲み込ませようとする。コミック作…
ジェシカ(バベット・ヴェルベーク)が診察してくれた看護師に抱きつく姿に、自分の中に命があるのに一時間も静かな時、心音が速い時、どれだけ心細くなるだろうと思う。そうした実感のこもった一場面、一個人といったいわば「点」の周囲が次第に広がり世界…
全員が手話を使いながら遊んだり宿題したりしている子ども達。その中の一人、ジーソンが「学校はつまらない」と言う理由が程なく分かる。読話と口話の強制で勉強する権利を奪われていたろう者の彼が長じてノートの取り方…勉強の仕方がうまくないのはそのため…
車の後ろの窓に貼った「団結闘争」の文字を剥がして一人、停まっている他の車の間を抜けて新居のドゥリムパレスへ向かうヘジョン(キム・ソニョン)。労働災害で夫を亡くした彼女は真相究明を求める遺族会でのストライキや人間関係、真相が分からないこと自…
ミルトン(ベン・キングズレー)がせっせと足を運ぶ町議会では、町民に対し行政側は「返答しません」。友人サンディー(ハリエット・サンソム・ハリス)などは話し合いを諦め「報告」しているが、物忘れの始まった彼は毎日同じ発言をし、議員らはそのことに…
『しあわせな選択』(原題直訳「仕方がない」、感想)で最も鮮烈だったのは主人公マンスが「一人生き残った」場面だが、本作のドクシャ(アン・ヒョソプ)が失望した小説のラストはあれと同じだろう。彼はいじめの加害者にもう一人の被害者と闘うよう言われ…