映画

シェヘラザードの日記/ラシーダ

イスラーム映画祭6にて観賞。 ▽「シェヘラザードの日記」(2013年レバノン、ゼイナ・ダッカーシュ監督)はドラマセラピーに参加する女性囚たちを描いたドキュメンタリー。よいドキュメンタリーの多くが「『今』はどうなっているのか」と考えさせるものだけど…

春江水暖 しゅんこうすいだん

祝いの席で母親が四人の息子に金を渡し、次いで孫達にというところで倒れてしまうのが幕開け。気付けばずっと金の話である。この映画ではその発端を、現在(2019年制作時)32歳だという教師のジャンが書いている小説の舞台である90年代…ということは四兄弟が…

すばらしき世界

自分は一匹狼だと強調する三上(役所広司)は、単独で生きることにこだわり生活保護を忌憚する。役所でのやりとりに倒れたり下の部屋の男にキレたりするのもそのことに触れられた時である。一方で例えば弁護士(橋爪功)の妻(梶芽衣子)の「ミシンが重かっ…

マダム

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2019年スイス、ステファン・リートハウザー監督。これまた妙のあるドキュメンタリーだった。「おちんちん」に始まるホームビデオ、長じては主に写真に映し出されているステファン自身が…

思春期 彼女たちの選択

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2019年、セバスチャン・リフシッツ監督。フランスの田舎町に暮らす二人の少女の13歳から18歳までを収めたドキュメンタリー。映画は中学二年生になったアナイスとエマが教室で並んで先生…

花束みたいな恋をした

映画「デート&ナイト」の冒頭、レストランで近くの夫婦を茶化して喋り倒すティナ・フェイとスティーヴ・カレルが私は大好きなんだけど(これはアメリカ映画でよく見られる「気の合う二人」の描写、彼らの場合は「倦怠期」だけども)、それ以前の二人はどん…

わたしの叔父さん

冒頭の一幕、それまで半ば隠されていたクリス(イェデ・スナゴー)の顔が初めてはっきり映るのはトラクターの運転席から叔父さんを見る時。朝から視線を合わせることもなく互いにやることをやっている相手への、「心配でたまらない」という瞳が映画の後もな…

フェリチタ!

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2019年、ブルーノ・メルル監督。住居を持たずに生きる一家の子、11歳のトミーが待ち望む新学期前日の物語。「音楽をかけなきゃな、最高のを」の後の「Felicita(フェリチタ=幸福)」が…

最近見たもの

▽KCIA 南山の部長たち序盤、イ・ビョンホン演じるキム・ギュピョンの「アメリカが注視しています」との進言に、ドラマ「ミスター・サンシャイン」を思い出した(その後も諸所で)。アメリカと日本の顔色を窺わないと生きてこられなかった国の物語なんだなと…

43年後のアイ・ラヴ・ユー

予告から想像し得ない要素の数々が面白かった。演劇評論家のクロード(ブルース・ダーン)が、認知症を患ったかつての恋人に会うため初めて「演じる」側となる。病気のふりをすることで、愛する人に忘れられたといういわば苦痛を自身の家族に与える側に回る…

クエシパン 私たちの時代

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2020年、ミリアム・ヴェロー監督。北アメリカの先住民インヌ族の少女二人の物語。「二人の家を建てよう、海辺に、ばかでかいやつを」。映画に出てくる「うちらの家を持とう」とは大抵、…

恋する遊園地

冒頭、「足」を持たないジャンヌ(ノエミ・メルラン)がエマニュエル・ベルコ演じるママに職場まで車で送ってもらう様子は、親子というより友達同士に見える。到着した遊園地は川を渡った向こう。その流れに「IT:chapter two」のグザヴィエ・ドランのパート…

チャンシルさんには福が多いね

序盤にチャンシル(カン・マルグム)が夢に見る「そばにいます」と後に実際に口にする「そばにいてください」から、当初の彼女の願いが分かる。そばにいてほしい。夢の中の抱擁のように、肉体を感じられるくらい、でも苦しくない程度に、誰かと一緒にいたい…

Swallow スワロウ

テレビのCMの「輝いて愛されよう」とか何とかいう宣伝文句に、男性にハグされている女性の笑顔。これがハンター(ヘイリー・ベネット)が世界から受け取り信じているメッセージである(夫も歯を白くするための努力をしているが、立場が違えば意味は異なる)…

ミセス・ノイズィ

真紀(篠原ゆき子)に対する夫・裕一(長尾卓磨)のオープニングの一言、程無く世界から色が失われてゆく演出は、「母親になると弱者に転落する」ことの表れ。この映画にはまず、子の殺人や虐待などが露わになると母親ばかりが責められるという事実が示唆さ…

新感染半島 ファイナル・ステージ

「お前らなんていつ難民に認定されるか分からないんだから、金を貯めとけよ」(=「自助」しろよ)。こう焚き付けて人を使い捨てする奴の「助け合ってたら死ぬぞ」とのアドバイスに、「半島」仲間の一人が「この二人(カン・ドンウォン演じるジョンソクとキ…

今年を振り返って

今年見た映画の中からお気に入りベスト10を、観賞順に。▼リンドグレーン(感想)▼ロニートとエスティ 彼女たちの選択(感想)▼37セカンズ(感想)▼恐竜が教えてくれたこと(感想)▼アドリフト 41日間の漂流(感想)▼イップ・マン 完結(感想)▼幸せへのまわ…

私をくいとめて

映画はみつ子(のん)が「隣の人」に「よろしく頼みます」と言うのに終わる。これは自分自身(=A)にしか頼ってこなかった主人公が他人を頼りに出来るようになるまでの話である。頼り合うことの出来るまっとうな関係が作中では横並びでもって表され、彼女が…

ケリー・ライカート特集

下高井戸シネマにて開催されたケリー・ライカート監督特集で3作を観賞。 ▼オールド・ジョイ(2006)冒頭、縦列駐車した一台から降りたマーク(ダニエル・ロンドン)が曇天を背に歩いてくる画がなぜだか素晴らしかった。ライカート監督の映画は縦や横がはっき…

クローゼット

今年最後を飾る韓国映画として充分満足。そんなに甘くないぞと若干の不満を抱きつつも、ハ・ジョンウ演じる悪い大人がヒーローになるまでの物語を胸熱くして見た。オープニング、運転席の父親がサングラスを外すと娘の方が目を閉じ視線が合うことはないとい…

マリアンの友だち/タイムズ・スクエア

特集上映「サム・フリークス Vol.10」にて二作を観賞。これまで見てきたこの企画のうち今回ほど、こんなにも同じ要素が被りながらこんなにも扱いによりそれらの意味合いが違ってくるという二本立てはないと思った。それでいて根っこは同じ。毎度のことながら…

最近見たもの

▼また、あなたとブッククラブでオープニングは仲間を紹介するダイアン・キートンのナレーション、最初のジェーン・フォンダの登場カットに気持ちがあがる。「お金持ち」で「男女の恋愛をよきものとする」四人の話だけども、アンディ・ガルシアの「君のファー…

ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ベネズエラ

ラテンビート映画祭2020のオンライン配信にて観賞。2020年ベネズエラ・イギリス・ブラジル・オーストリア制作、アナベル・ロドリゲス・リオス監督。ベネズエラ最大の油田マラカイボ湖に浮かぶ小さな集落、コンゴ・ミラドール。この村の話をしよう…との女の声…

家庭裁判所 第3H法廷

ラテンビート映画祭2020のオンライン配信にて観賞。2020年アメリカ・スペイン制作、アントニオ・メンデス・エスパルサ監督。 「国の正義は弱者の声に表れる」とのジェイムズ・ボールドウィンの言葉に始まるドキュメンタリー。米フロリダ州の裁判所、主任裁判…

The Fight

True Colors Film Festivalのオンライン上映にて観賞。2020年アメリカ制作、エリス・スタインバーグ、ジョシュ・クリーグマン、エリ・デスプレス監督。アメリカ自由人権協会(ACLU)がトランプ政権相手に起こしてきた多くの訴訟のうちの4件を通じて弁護士の…

Listen

True Colors Film Festivalのオンライン上映にて観賞。2020年ポルトガル・イギリス制作、アナ・ロッカ・デ・スーザ監督。映画はごく普通の朝に始まるが、まずロンドンに暮らすこのポルトガル人一家が困窮していることが見えてくる。ゼロ時間契約で貯木場で働…

燃ゆる女の肖像

エロイーズ(アデル・エネル)いわく「一人は確かに自由です、でも寂しかった」。その母である伯爵夫人(素晴らしきヴァレリア・ゴリノ)が言う「笑い合うのだって一人じゃできない」じゃないけれど、何だって誰かとしたい。その相手とは対等でありたい。そ…

まっさらな光のもとで/私と彼女

イタリア映画祭2020オンライン配信で見たマルゲリータ・ブイ主演の過去作二本の記録。 ▽まっさらな光のもとで2009年、フランチェスカ・コメンチーニ監督。ナポリの夜間中学で国語の授業を担うマリア(ブイ)は作中最初の授業の場面で生徒が誤ったことを書い…

君の誕生日

映画の始め、仁川国際空港に降り立ちタクシーでどこかへ向かうジョンイル(ソル・ギョング)の道のりが「出かける」ようにも「帰る」ようにも見えないのに少々困惑させられたが、その理由は次第に分かってくる。彼はいったん途切れた道に現れたのだと。韓国…

ヒトラーに盗られたうさぎ

ジュディス・カーの自伝「ヒトラーにぬすまれたももいろうさぎ」は未読。ベルリンから逃れたパリで、アンナの母(カーラ・ジュリ)が自分達とは違う非・ユダヤ人かつ裕福な家庭の婦人と連弾をする場面で胸がいっぱいになった。単に音楽に心躍らされたわけじ…