映画

コレット

最後に「さすらいの女」の「今は幸せを求めている」という一文がコレット(キーラ・ナイトレイ)の声で語られる。かつてミッシー(デニース・ゴフ)に「幸せな人なんている?」と返した彼女はもういない。コレットは自分で自分を真に舞台に立たせ、その名を…

僕たちは希望という名の列車に乗った

「人は皆、何らかの体制に従属している 自分で物を考えて決める時だけ、そこから自由になる 君達はそれをしたから、国家の敵だ」ラース・クラウメ(監督・脚本)の前作「アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男」(2015)は記録映像中のフリッツ・バウ…

RBG 最強の85歳

「私達は入念に準備して懸命に戦った」「彼女から返ってきた原稿には多くの細かい修正がなされていた」とはルース・ベイダー・ギンズバーグと共に働いた女性達の言だが(友人によると「彼女ほど自己主張をしない人はいない」そうだが、その成果により周囲の…

スケート・キッチン

実在する女子だけのスケートクルー「スケート・キッチン」が題材と聞きドキュメンタリーだと思い込んでいたので全く違う内容にびっくりしつつ、いかにも劇映画らしい、つまり見慣れたストーリーの根底に人生は常にクライマックスなんだという感じが流れてい…

ダンプリン

Netflixにて観賞。私が原作小説「恋するぷにちゃん」を読んだ時に泣いた箇所が冒頭の主人公ウィル(ダニエル・マクドナルド)のナレーションに持ってこられておりびっくりした。「ルーシーおばさんは自分抜きでどう生きるかを教えてくれた」。映画は真っ赤な…

ザ・フォーリナー 復讐者

「タトゥーの入った背中」が男に過去があることを示す映画を近年重ねて見た。本作の冒頭女と裸で目覚めるのに登場するリアム(ピアース・ブロスナン)の腕にもタトゥーがあるが、彼は背中は見せない。タトゥーは今は北アイルランド副首相である彼がかつてIRA…

パパは奮闘中!

映画は子ども二人が寝ている暗いうちから車で出勤するオリヴィエ(ロマン・デュリス)と、その子らと楽しそうに、傍からは円満に見える時間を過ごす妻、その間に彼が職場で人事担当者に同僚の解雇を取り消すよう掛け合っているのに始まる。失業率の高い現在…

ある少年の告白

ジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)の父で牧師のマーシャル(ラッセル・クロウ)の説教において、「この中で完璧じゃない人は?」と問われた母ナンシー(ニコール・キッドマン)含む皆は笑って手を挙げるが、息子の回想の冒頭に置かれたこの場面からは、「人…

僕たちのラストステージ

作中のローレル&ハーディがショーを締めくくる「楽しんでいただけましたか、僕たちは楽しかったです」とはとても良いセリフだが(授業の終わりにも言いたくなるような…と考えると、あれは実に、頑張って準備した時でないと出てこない言葉だ)、これは二人が…

荒野にて

引っ越しの荷物からまず小さなトロフィーを窓辺に並べるオープニングのチャーリー(チャーリー・プラマー)の姿に、彼がここを家と認識していること、あるいはしようとしていること、ささやかなよい思い出があることが分かる。続く一幕からは、彼が父親レイ…

12か月の未来図

全ての(愚かでも未熟でも…とは保身のためにそう書いておくんだけれども・笑)心ある教員の姿がここにある、とも言えるが、これは誰かが未知のものに触れることによって社会はより良くなるという話である。人を人とも思っていなかった主人公が他の世界を知る…

希望の灯り

映画の始め、スーパーマーケットで働く者達のリーダーであるルディは新人クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)を「気楽な仕事だ」と迎え「神聖な職場だ」と共に店へ出る。どういうことだろうと思いながら見ていると、年長者達は禁煙の店内でタバコを吸い…

セメントの記憶

この映画のオープニングの空撮からは、自由ではなく着地する場を失ったような不安を感じる。それは当たっている。昼は高層ビルの建設現場で働き夜はそのビルの地下で眠るシリア人移民労働者の心境は、作中のナレーションで端的に説明される。「12時間は都市…

記者たち 衝撃と畏怖の真実

映画は退役軍人聴聞会において若者が証言するのに始まる。原稿を読んでいた彼の口から「自分の言葉」が飛び出し、幾つかの数字でアメリカの軍事が語られる。これは「アメリカが他国に攻撃されてから他国を攻撃するまでの日数…555日」の話である。 顔の半分に…

リヴァプール、最後の恋

元よりグロリア・グレアムに似ているアネット・ベニングの演技があらゆる意味で完璧で、全てのセリフでもって常にジェイミー・ベル演じるピーターを誘惑しているんだけれども不自然じゃなく、こういう人っているかも、私もそうなるかも、よくある恋物語だと…

ブラック・クランズマン

この映画は「映画が影響を与えない、などということはあり得ない」と訴えているのだから、見ている間は幾らか笑ったり快哉を叫んだりすることが出来ようとも家に持って帰るのはこれだ、と最後に喉に岩を突っ込まれるのが当然なのだ。クライマックスでは作中…

ビリーブ 未来への大逆転

冒頭、「ハーバードマン」の中に入ることを許されたルース・ベイダー・ギンズバーグ(フェリシティ・ジョーンズ)ら女達は、「彼女達のため」に開かれた歓迎会で「男の席を奪ってまで入学した理由」を問われその内容をジャッジされる。主催の学部長グリスウ…

幸せのアレンジ

イスラーム映画祭4にて観賞。2007年アメリカ、ダイアン・クレスポ、ステファン・シェイファー監督作。映画は「実験室」ニューヨークの小学校の教員研修に始まる。これだけでも珍しいのにその内容が多人種対応というのが面白い。ムスリマのナシーラが自らの意…

ナイジェリアのスーダンさん

イスラーム映画祭4にて観賞。2018年インド、ザカリヤ監督作。映画が始まるとながーいクレジットや謝辞をバックにサッカーの試合周りのあれこれの音声が流れる。後に主人公マジードが「こんなに泥臭い(原語ではどんなニュアンスなんだろう、この上映の日本語…

わたしはヌジューム、10歳で離婚した

イスラーム映画祭4にて観賞。2015年イエメン=UAE=フランス、ハディージャ・アル=サラーミー監督作。上映前に流れた観客へのメッセージで監督が「子どもが彼らを見くびっている大人に対し若さを武器に抵抗する姿を描きたかった」と言っていたので、オープ…

気乗りのしない革命家/イエメン:子どもたちと戦争

イスラーム映画祭4にて、セットで上映されている二作を観賞。 ▼「気乗りのしない革命家」(2012年イギリス/ショーン・マカリスター監督)は道にばらまれた石に「ファックオフ、タリバン!」とののしり声をあげる男性に始まる。彼はイギリス人ジャーナリスト…

キャプテン・マーベル

(以下少々「ネタバレ」あり)映画はヴァース(ブリー・ラーソン)と彼女に「疑念、感情、ユーモア」を持つことを禁じる司令官ヨン・ロッグ(ジュード・ロウ)に始まる。女が自分よりも下にいる限りは有効に使ってやろうというこの男、最後に手を差し出され…

ビサイド・ボウイ ミック・ロンソンの軌跡

ドキュメンタリーは「The Jean Genie」とフレディ・マーキュリー追悼公演での「All The Young Dudes」という見慣れた映像に始まるが、その直前のボウイの「ミック・ロンソンは収録よりもライブの時の方がずっとワイルドだった」との語りでこれまでと少し違っ…

運び屋

(少々の「ネタバレ」あり)素晴らしい作りの映画だったけれど、イーストウッドの悪癖「全ての女がイーストウッドに理不尽なまでに好意的」が枝葉だけじゃなく幹にまでやりたい放題に及んでおり見ていて辛かった。映画の最後に彼演じるアールが「自分は全て…

マイ・ブックショップ

この映画が描いているのは、人が滅ぼす者と滅ぼされる者とに分かれているこの世において、自らが滅ぼされる側であっても立ち向かう者の崇高さと、出来るだけ楽をしようと滅ぼす側につく者の有害さである。彼らを分かつものは勇気を持っているか否かである。…

THE GUILTY ギルティ

機器を装着した主人公アスガー(ヤコブ・セーダーグレン)の耳のアップにふと「接地」という言葉が思い浮かぶ。彼と外部との唯一の繋がりでもって映画が始まる。やがて彼が明日裁判を控えていること…すなわち有罪と無罪の間に居ること、結婚指輪をしているが…

天国でまた会おう

物語はモロッコの憲兵隊支部において一人の中年男性が手錠を掛けられるのに始まる。これもまた私の集めている「ある人物の語り」形式の映画だが、この男、アルベール(監督兼主演のアルベール・デュポンテル)が平凡で実直な印象なものだから、映画の作りも…

サタデーナイト・チャーチ

物語は主人公ユリシーズ(ルカ・カイン)の父親の死に始まる。母親と彼と弟、三人の家族は「おばあちゃんちに引っ越」さなくても済むよう、叔母に子どもの世話を頼んで新生活に乗り出す。母親が夜勤に出掛けるまであと20分の食卓での会話、叔母による兄だけ…

ビール・ストリートの恋人たち

既に多くを背負う人々が登場するタイプの映画もあるが、これは一から人々を語っていくタイプの映画である。当たり前だと言われそうだけど、これをきちんとやっている映画ってそう多くない。私にはこのやり方は非常に小説的に感じられる。 一つの暗雲あるいは…

あなたはまだ帰ってこない

映画は「全てを覚えているが書いている私の姿だけが思い出せない」というマルグリット・デュラス(メラニー・ティエリー)のうさんくさい前書きに始まる。そういえば先週見た同じく物を書く女の話である「金子文子と朴烈」にもこれのおよそ真逆とも言える注…