映画

ブリング・ミー・ホーム 尋ね人

映画の序盤、ジョンヨン(イ・ヨンエ)とミョングク(パク・ヘジュン)が車で拾う青年スンヒョン(イ・ウォングン)に何て素敵な笑顔だと思っていたら、後に自分の馬鹿さ加減を知ることになる。彼はそれを「捨てられないために」身に着けたのである。日頃、…

スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話

世界一タフじゃなきゃ務まらない仕事人の話に、ヴァンサン・カッセルとレダ・カテブがはまっていた。斜めに座って監査局の調査人を迎えたブリュノ(カッセル)いわく「それじゃあなぜ皆はここに連絡してくるんだ、頼るんだ」。映画の終わりに出る「代替手段…

バッド・レピュテーション

シネマート新宿で開催中のロックドキュメンタリー特集「UNDERDOCS」にて観賞。ジョーン・ジェットの人生をまとめた2018年作品。▽オープニング、親にねだってギターを買ってもらったという話に合わせて女の子がギターを抱える広告写真。ジョーンが実際に見た…

マイアミ・ブルース/サム・フリークス

特集上映「サム・フリークス Vol.9」にて二作を観賞。 ▼「マイアミ・ブルース」(1990/アメリカ/ジョージ・アーミテイジ監督)は詐欺師の男と大学生の女のしばらくの物語。「何歳?」に始まり「『ペッパー』?」の笑いで締められるジュニア(アレック・ボ…

行き止まりの世界に生まれて

そうなんだよね、山の映画やスケートボードの映画はカメラマンもその達人なんだよね、しかもこの映画は撮影している監督が仲間なんだよねと見始める。ロックフォードをスケートでゆく青年達は、街中に人どころか車もまばらなためか(早朝だからかと思いきや…

シリアにて

「換気の悪さに息が苦しくなる映画」というのがある。近年じゃあれもそうだった、と思い出してみればこれも元シリア兵の監督がシリア人移民・難民の労働者を描いた「セメントの記憶」だった。本作では窓を開けてもいるし換気扇だってありそうだけど、セリフ…

ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー

「リフトの客評価が低い」モリー(ビーニー・フェルドスタイン)は、エイミー(ケイトリン・ディーヴァー)以外の運転する車に乗るのが苦手である。「私達には多面性がある、皆に私の色んな魅力を知ってほしい」と願いつつ自分は周囲を見ようとせず、世界を…

週末の記録

土曜日は紀尾井町のプリンスギャラリー最上階のオアシスガーデンにてハワイアンフェア。注文したのはココナッツ風味のフライドライスに海老をのせたシュリンプアントレと、蜂蜜とこれまたココナッツシロップをかけるハワイアン・ダッチベイビー。海老など特…

思い、思われ、ふり、ふられ

映画が始まるや、四人それぞれの心の声を押し出してくる作りが異様に感じられ驚かされる。でも次第に分かってくる、これは「口に出すか出さないか」の話なんだって。尤も高校生の彼らの「口に出すか出さないか」問題は四人の間、それこそタイトルの「思い、…

ポルトガル、夏の終わり

始まると黒いスクリーンにクレジットが出てまず音だけが、という映画はよくあるけれど、ここでは白に黒字。眩しさに、目を覚ましてよく見てねと言われているようだと思った。私が確認したのは、時間と場所を共にする時、人はそれぞれ局面を持ち寄っているの…

母性

第3回東京イラン映画祭にて観賞。2017年、ロガイエ・タヴァッコリー監督。今回の上映作のうち女性監督の作品は二本、いずれも女だけの家の物語だった。イラン・イラク戦争を描いた「別荘の人々」(感想)に対し、こちらは現代のヤズドが舞台。姉妹とその叔母…

別荘の人々

第3回東京イラン映画祭にて観賞。英題「Villa Dwellers」、2016年、モニール・ゲイディー監督。イラン・イラク戦争の最中、軍人の妻子達が疎開施設となった前線近くの別荘に待機する姿を描く。映画は「トヨタのハイエース」が別荘に向かう道のりに始まる。運…

ジョーンの秘密

スパイ(を扱った)映画の多くに登場するスパイはその時点で既にスパイであり自覚も備えているが、本作の主人公ジョーン・スタンリー(ジュディ・デンチ)はオープニング早々に逮捕されながら昔も今も自らをスパイとは思っていない。これは彼女がそう見做さ…

パパとマチルダ/少女ジュリエット

特集上映「サム・フリークス Vol.8」にて、父と娘の映画二作を観賞。振り返るとどちらも少女が自分の強い意思を示して終わるのだった。 ▼「パパとマチルダ」(1994/アメリカ/ギリーズ・マッキノン監督)はジョージ・エリオットの「サイラス・マーナー」を…

ストレンジ・フィーリング アリスのエッチな青春白書

「未体験ゾーンの映画たち2020 延長戦」にて観賞。原題「Yes, God, Yes」、2019年制作。全然こっちに語りかけてこない映画だなとぴんとこないまま見ていたら、それもそのはず、これは主人公アリス(ナタリア・ダイアー)が目覚めるのと同時に全てがこっちに…

海底47m 古代マヤの死の迷宮

こんなによく出来た映画は久々だと思うくらいよく出来ており、見ているこちらの体の感じを丁度よく、最初から最後まで保ってくれた。その晩「小さな窓からリュックを背負って逃げようとする(けど躊躇する)」夢を見たのはこの映画のせいに違いあるまい。全…

落穂拾い

岩波ホールセレクション第三弾のアニエス・ヴァルダ傑作セレクションにて観賞。原題「Les Glaneurs et la Glaneuse」、2000年制作。ヴァルダは音楽家の友人が拾わなかった時計を引き取り「針が無いなんて私にぴったり」と飾ってみせるけれど、この映画には時…

グレース・オブ・ゴッド 告発の時

開始早々、体感では10分程度でアレクサンドル(メルヴィル・プポー)とかつて彼に性的虐待を行ったプレナ神父とが顔を合わせる。映画は神父による性的虐待の被害者達の行動を順を追って淡々と描く。それら全ては本来彼らがする必要なんてないこと。被害を受…

パブリック 図書館の奇跡

「あなたは本が好きですか、人が好きですか、もしそうなら図書館員に向いています」というオープニングにそれなら私も向いている、いや自分を過大評価しているだけか、図書館員とは一体何だろうと見始める。あらゆる人、という箇所でふと、「ホームレス ニュ…

透明人間

「透明人間」なんて何だか気持ち悪くて扱った作品をこれまで見たことがないので比べられないけど、この映画は面白かった。でも目がくたびれた。見てくるだけ見てくる卑怯なやつをこっちも見てやると目を凝らしまくるんだから、そりゃそうだよね。二度と見た…

マルモイ ことばあつめ

「韓国は第二次世界大戦後に独立した中で自国の言語を取り戻した唯一の国である」。何てすごいことだろうと思う。次に韓国に行ったら、映画の終わりに紹介される実際の辞典が所蔵されている国立ハングル博物館を訪れてみたい。できれば寄付など何かしたい(…

チア・アップ!

キャロル・キングの「Bitter with the Sweet」にのせてダイアン・キートンがスバルのワゴンを運転するオープニングタイトルに面白いキートン映画の匂いを嗅ぎ取っていたら…尤も今世紀に入ってからの彼女の主演映画は大体面白い、お金持ちの話ばかりだけどね……

イップ・マン 完結

武蔵野館にて、上映前の「追龍」の予告で「1974年以前の香港は暗黒時代だった」と聞いてからの、冒頭サンフランシスコでとある席に着いた師匠の顔が何だか沈んで見えてからの、64年の香港。映画の終わりの字幕に師匠は74年を知らずして死んだんだと改めて思…

ランボー ラスト・ブラッド

「ランボー」とは私には、まだそんなことにこだわってるの、もう終わったじゃんとは決して言わせない、という(人々の気持ちを代弁する)映画である。それと「ランボー」まだ作ってるんだ、というのが重なるのも今世紀の二本が面白い所以じゃないかと思う。…

アドリフト 41日間の漂流

「最終的な目的地はない、家へ帰るつもりもない、仕事は旅費が稼げればいい」と生きていたタミー(シャイリーン・ウッドリー)がひょんなことから現在地のタヒチから故郷のサンディエゴに戻ることになる。発つ前に認めた母親への手紙にいわく「ボーイフレン…

はちどり

1994年、ソウルの公立女子中学校。日本じゃ無いタイプの教卓だなと見ていたら、お仕置き棒を手にした担任の英語の授業、リーバイスを履いた漢文塾の「コ大男」の授業、いずれもつまらなく、主人公ウニと親友ジスクは彼らを裏で「先公」と馬鹿にしている。 一…

フリア IST

EUフィルムデーズのオンライン上映にて観賞、2017年、スペイン、エレナ・マルティン監督。舞台は主人公フリアがエラスムス計画によって留学する先のベルリン。ベルリン芸術大学の建築学科の教授いわく「ベルリンは『(過去でも未来でもない)現在の都市』だ…

メルテム 夏の嵐

EUフィルムデーズのオンライン上映にて観賞、2018年、フランス・ギリシャ、バジル・ドガニス監督。舞台は「渡り鳥を見るのに世界一の場所」、レスボス島。主人公エレナは母が恋人マノスと暮らすのを嫌がり父の住むパリへ渡り、連絡を絶ったまま母を亡くして…

ルーザーとしての私の最後の年

EUフィルムデーズのオンライン上映にて観賞、2018年スロヴェニア、ウルシャ・メナルト監督。不思議と引き込まれる一作だった。舞台はスロヴェニアの観光地(と何度か言及されるので地元の人にはそういう意識が第一なんだろう)リュブリャナ。30手前の主人公…

精神0

タイトルが出た後、時を経た水辺の舟の画が暗くから明るくなっていくのに、こんな演出をするなんて珍しいなと思っていたら、先日見たばかりの新しい「若草物語」を思わせる手法が取られてもいるのだった。「若草物語」と「続若草物語」(にそれぞれ呼応する…