俺らのマブダチ リッキー・スタニッキー


ピーター・ファレリーの新作は、終盤ある人物が言うように「これぞ物語」で面白かった。コメディは、あるいは映画は全てそうなのかもしれないけれど、要素の組み合わせが物を言う。また男達がつるんで女達から逃げる話かと見ていたら(ジョン・シナ演じる物真似芸人ロッドが最初に披露するのがオーウェン・ウィルソンの真似というのがまた、そういうのやりそうだから。いやうんこしっこ映画には出ないか)「場違いなやつ」の話へ、そして「親友」の話へと着地して、冒頭の設定はこれらを描くためだったと分かる。

ディーン役のザック・エフロンとリッキー・スタニッキーことロッド役のジョン・シナの目はこんな色だったんだ、同じ色なんだなと初めて気付いて妙な気持ちになっていたら、これは最低の家に育った男のウソを最低の家に育った男が真実にする、「リッキー・スタニッキー」の元に男達が幸せになる話なのだった。キーワードは男同士のケア。誰にでも本当のことを言うロッドが唯一隠していたのが…聞かれなかったから嘘ではないのかもしれないけれど…親友が出来たようで嬉しいという気持ちだったというのが泣きどころにして笑いどころ。

一つには本物・偽物って何だろうというファレリー兄弟らしい話でもある。リッキー・スタニッキーことロッドがそのままの彼でもって対人関係でもビジネスでもうまくやったのを思うと(彼にとって大切なのは「人に好かれること」)、人は自分を発揮できる場所にいるとは限らないということが描かれているんだと思う。いい場所を見つけたら名前ごと引っ越してしまえばいい。

ワイティティの『ネクスト・ゴール・ウィンズ』を先日見た際、クライマックスを「語り」にするのに何てセンスがいいんだと胸が躍ったものだけど、本作のロッドに不審な電話が掛かってくるが…のオチも大変に好み(クライマックスじゃないしあまりにくだらないけど)。主役を支える二人に加えラビ役のジェフリー・ロスなどコメディアンが遍在しているところもよい。