アドバンスト・スタイル そのファッションが、人生


発端は、2008年にカメラマンのアリ氏が始めたブログ「Advanced Style」。ニューヨークを独自のファッションで生きる60代以上の女性達の姿は評判となり、写真集が出版され、こうして映画も作られた。
今年二月に開催された写真展では、ある(勿論「個性的」な装いが素敵な)女性の「私は生涯活動家、かつては女性差別と闘い、今は老人差別と闘っている」という言葉が心に残ったものだ。変な言い方だけど、私も一人で社会運動しながら生きているつもり。どんな人でも生きてていいのだっていう社会を目指してるの(笑)それだってやはりまずファッション。お洒落心の無い私の場合は「相応」を無視するってことになるけど。


映画はアリ氏の語りで始まる。地下鉄を降り、これはという女性を探す。一人目は顔を窺って通り過ぎる。二人目?に声を掛ける際、「so great」と言っているのによりによって「お若いですね」なんて字幕が付くのには驚き白けてしまった。
そのうち彼は「退場」し、冒頭から出ていた7人の女性につき深く掘り下げられる。ブログが切っ掛けで有名となり、広告に登場したり詩のような手紙をもらったり、ランバンのモデルにとの話が出たり(ランバンのもの持ってないから何か買おうと決めた)、ハリウッドに呼ばれてリッキー・レイク・ショーに出演したり(久々に見たリッキー、美人だった!)…「ブログもの」(ブログによって有名になるということを追った映画)といってもいい作りの中、どの瞬間にも彼女達のあれこれが詰まっている。


マネージャーのような形で付き添うアリ氏は、リッキー・レイク・ショーの際、三人のうち一人の楽屋を訪ねて「他の二人が委縮してるからパワーを少し抑えて」などと話す(この場面のみ作中唯一、カメラがドアの外で待機する)。ファッション好きだからといって「気が合う」わけではないのが、当たり前だけど面白い。
サスペンス番組のゲスト出演の打ち合わせの際には、スタッフに「彼女達はパワフルですが休憩が必要です」と強く言う。「年齢を聞かれたら50と死の間って答える」なんて彼女達は、死に近いところに居る。終盤、カメラは緑内障でものが殆ど見えないという告白や、転んだら終わりだからと階段をそろそろ下りる姿を映し出す。「死」も訪れる。それでも「そんなもの」という感じが漂う。自分も到達するであろう場所に常に「先輩」が居るというのは、考えたらすごいことだ。



(ランバンの写真撮影をしながら)
「今日は素敵な絵をたくさん見て、目をきらめかせてきたの」


これは「オードリー・ヘプバーンが若く貧しい頃、口紅が買えないので唇を強く噛んで赤い色にしていた」という伝説?よりも私としてはずっと好きな「いいやり方」!