2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

時は止まりぬ

「蘇ったフィルムたち チネマ・リトロバート映画祭」にて観賞、エルマンノ・オルミ初の長編劇映画(1958年イタリア制作)。水力発電のためのダム建設現場の冬季監視員として雪深い山小屋で過ごす男二人の数日間…特別な場所での普通の時間が描かれる。年長の…

北極星

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2022年フランス、アイナラ・ベラ監督作品。いったん海に出れば2週間は携帯電話も繋がらないベテラン船長のアヤットは、妹レイラと自分を「私達」と言う。妹の出産に際し、私達は祖母、母…

コット、はじまりの夏

冒頭、駆けて学校の塀を飛び越えるコット(キャサリン・クリンチ)の小さな後ろ姿があまりに鮮烈。私達はあの後を追うことになる。映画はオープニングからずっと彼女と彼女に向かい合う者をど真ん中に据え続ける。画面中央のコットにアイリン(キャリー・ク…

ふたりだけのロデオ

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2022年カナダ、ジョエル・デジャルダン=パケット監督作品。冒頭トラックレース(ロデオ)に負けての「世界で一番強いのは誰だ?」とは月並みな発破、「相棒」との合言葉に聞こえるが、…

スペアキー

マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2021年フランス、ジャンヌ・アスラン、ポール・サンティラン監督作品。演技であっても心配になるほど子どもが折檻されているオープニング。フィフィ(原題『Fifi』、セレスト・ブリュン…

いつか見た青い空/セカンドインパクト

特集上映「サム・フリークス Vol.26」にてアメリカ映画二本立てを観賞。▼用を足すのに他人の手を借りなければならないからと避難所で水分を控える高齢者の話を聞くけれど、『いつか見た青い空』(1965年アメリカ、ガイ・グリーン監督)で大好きなパイナップ…

僕らの世界が交わるまで

今終わる!と思ったところでやはり終わったラストカットは母エヴリン(ジュリアン・ムーア)が息子ジギー(フィン・ウルフハード)の何年前だろうか、初めてのVlogを初めて見終わって後にしたオフィス。この映画の面白いのはまず、家族である二人が(邦題を…

カラオケ行こ!

例えば少年・岡聡実の声変わりを「ついに僕もアレを迎えてしまいました」と繊細に描くところに無知ながらBLらしさ(私にとってこれはBL)を感じていたのが、映画ではこの要素の一番美味しいところを後輩の和田が持って行く。自分も声変わりをすると知らない…

ミツバチと私

洗濯物を干しながら母アナ(パトリシア・ロペス・アルナイス)とその母リタ(イツィアル・ラスカノ)が話す場面に、子どものころ一番嫌だったのは自分の見えないところで家族に自分の話をされることだったと思い出した。多くの面でマジョリティであり、付け…

コンクリート・ユートピア

(以下「ネタバレ」しています)原作漫画と異なるタイトルは、参考にしたアパート研究書からオム・テファ監督が取ったんだそう。近年の韓国ドラマ、例えば『賢い医師生活』(S1、2020)にはアパートのチョンセ(保証金)詐欺、『悪霊狩猟団 カウンターズ』(…

ブルーバック あの海を見ていた

予告からは内容が掴めなかったけれど、オーストラリアの映画を見ようと出向いてみたら面白かった。主人公が「ブルーバック」(大きな魚、ウエスタン・ブルーグローバーに彼女がつけた名前)を他の人間から守る場面は無声映画のようで、力強いスリルとエモー…

マイ・ハート・パピー

主人公ミンス(ユ・ヨンソク)は犬のルーニーと、従兄弟のジングク(チャ・テヒョン)と、恋人ソンギョン(チョン・インソン)と、手と手で愛情を確認し合う…ことから彼にとって、この映画にとって、犬とは自分で選んだ大切な家族なのだと分かる。冒頭のミン…