ふたりだけのロデオ


マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2022年カナダ、ジョエル・デジャルダン=パケット監督作品。

冒頭トラックレース(ロデオ)に負けての「世界で一番強いのは誰だ?」とは月並みな発破、「相棒」との合言葉に聞こえるが、これがずっと根にある。父と娘の旅は「強くなければ」と苦しむ二人が強いって自分の思ってるようじゃない、誰かに勝つってことじゃないと気付いて解放されるまでの道程だった。原題Rodeoからの『ふたりだけのロデオ』という邦題はいわばネタバレなわけだけど、映画の終わりにそうだったのかと思うのは悪くない。

父親セルジュJr.はピラニアの餌になる白ネズミや蜘蛛の巣にかかった虫といった食われることの決まっている存在を自分と重ねて思い悩み、遂には銃を購入する。娘リリーは自分達のトラックを追い抜いた車に傷をつけ、「強さのしるし」である空手の道着を脱ごうとしない。それらは文化からして染められている大好きな父の影響なんだろう。重ねた嘘がばれての危機を、キャリアの長い運転手の女性とのちょっとした触れ合いが救う。「娘さんはもう強い」との言葉に、そうかと気付いた父はその強さにふさわしいよう道着を洗ってやるのだった。

レースの後もう家に送れないからと「そばにいて」と言う娘をトラックに残し外の打ち上げに出て行くのを始め、検問でいないことにされる「ゲーム」にチーズボールとココアの食事、父の行動は最初から勝手かつ無責任である。週末の取り決めを反故にする元妻に「どれだけ謝ればいいのか」と訴えるところからして「独り占めしたい」という思いだけが先走り娘のことを考えていないと分かる。映画祭の紹介文に「監督の幼少期の思い出を軸に」とあったけれど、私なら大人になってからこんな優しい物語は紡げない。