北極星


マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルのオンライン上映にて観賞。2022年フランス、アイナラ・ベラ監督作品。

いったん海に出れば2週間は携帯電話も繋がらないベテラン船長のアヤットは、妹レイラと自分を「私達」と言う。妹の出産に際し、私達は祖母、母から続く「愛されなかった娘」という連鎖を断ち切らねばと。陸へ上がって生まれた子を精一杯愛するうち、ある男性との結婚話が持ち上がる…自分自身の出産という可能性が出てくる。誰かに属する安定が欲しいが愛されたことがないのでそういう関係が結べないと言いながら、新たな仕事の口を見つけキャンプしながら北の海へと足を向ける。きついとされる船上での暮らしに慣れているし天職なのだと。カメラは船の仕事や子どもとの時間といった姉妹の日常、二人が見ているものを映しながら、揺れながら進むアヤットの胸の内を語る。

女として僅かでも魅力があると厄介、男にエネルギーを取られてしまう…この後段は非常によく分かる物言いだ。アヤットは船上で遭った性被害の例をあげ、それらにつき組合の会議で7時間掛けて訴えたにも関わらず「個人の問題だ」と言われておしまいだったと語る。オープニング、これが私の運命、誰にも愛されない、親はなんで私を産んだのかと嘆きつつ雪中を行く彼女を映画は少々のユーモアも交えて見せるが、そちらの問題と違いこちらの問題はそんな遊びを交える余地なんてない、私の意志ではどうすることもできない。そしてそれは、意志で何とかなるかもしれない問題に全く関係ないのだろうか?そんなことはないと私は思う。