白雪姫と鏡の女王



私にとって「白雪姫」のお話自体が気分悪いものなので、その大きな理由である「女王はなぜ『世界一美しい』ことにこだわるのか?」という問題に果敢に切り込んだ「スノーホワイト」(感想)には胸がすく思いだった。女優二人は名演、アクションも見応えあったし。
翻って本作は、初めて予告に遭遇した時こそこういうコメディも面白いかなと思ったけど、考えたら上記の問題を「当たり前」のこととして片付けて笑いでごまかしてるとも言えるわけだから、そりゃあ乗れない。この感じは「ミレニアム」に対する「ドラゴン・タトゥーの女」への文句に近い(笑・「スノーホワイト」はそれほど面白くないけど)


(以下「ネタバレ」あり)


「御伽噺とはそういうものだから」という見方があるのは分かる。でも世の中「そういうもの」ばかりじゃん、それが社会に影響与えてるんでしょと思う。
冒頭、ジュリア・ロバーツによるナレーションで「それまで」が「私(女王)の物語」として語られる際、「運命」という言葉が強調される。白雪姫の母親が出産後に死んだのは「運命」だなんて、「御伽噺」を馬鹿にしてる感じは小気味いい。しかし物語の最中にもやたら「運命」を口にするので、これはそういう話だから、と作り手に説得されてるようで次第にむかついてくる。
ちなみに映画のラストは「やっぱりこれは(女王ではなく)白雪姫のお話でした」とシメられるんだけど(ここで原題「Mirror Mirror」というのはシャレかなと思う)、そりゃないだろうと思う。「そういう話」と女王のキャラクターとは噛み合っていないように感じられた。彼女の結末だけ辛気臭いから釈然としない。尤もそれも「運命」と自分で笑って死んだのか?


アーミー・ハマー演じる王子は、「小人や女とは戦わない」などの「正義感」、終盤に白雪姫と一戦交える際にひょいひょい体を交わす様子など、アーミーじゃなかったら少々むかつくような、持てる者の鷹揚さ、それが人によっては愛嬌につながる感じがよく出てた。わんこの場面は勿論最高。
白雪姫との出会いの際、上半身裸の王子が従者と吊り下げられている様は、どこか「異形」を感じさせる。また中盤、白雪姫が小人の家で目を覚ます場面でも、彼女がむっくり半身を起こしている様がやはり「異形」めいており、面白く感じた。話は戻って、助けられた王子と白雪姫が初めて「正対」する場面では、白雪姫目線で「ほうっ」となってしまった。
王子の従者が、女王に対しては一目で「いかれた女」と吐いて捨てるのに対し、白雪姫については、彼女の「『お願いします』と言って」というセリフをちゃっかりもらうのがいい。「please」が作品のちょっとしたキーになっている。


女王と白雪姫の双方に「おめかし」シーンあり。女王の方は「苦行」…しかし傍観者には笑えるというのは、深い意味があるんだろうか(笑)ふと、結局観なかった映画「ヘルタースケルター」のりりこのメンテ場面はどんな感じだったんだろう、などと思った。
一方の白雪姫の装いシーンは、これはこれで馬鹿馬鹿しいもので、「君のキスは苺の味がするね、どうして?」とのセリフには笑ってしまった。しかし両者とも「内容」は面白いのに、なぜか観ていて心が浮き立たず、監督というか作り手の映像センスが自分には合わないのかな、などと思った。