Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男



定期的に作られるディケンズもの、というより「クリスマス・キャロル」ものにして私の好きな「著名人の一時期を勝手に創作」ものなんだからそりゃあ面白かった、この組み合わせゆえの異色作。引っ越したばかりの屋敷の壁紙を始めとした青とディケンズ役のダン・スティーヴンスの瞳の色とが合って美しかった。お金、お金、お金にまつわる、でも「コメディだ」(…と言ってみせると人は安堵する)。


ディケンズにインスピレーションを与える救貧院育ちの「子ども」のメイドや親友のフォースターの、一見素朴に思われる「ティムを助けてほしい」という気持ちの源流を辿る話とも言える。それは同時にディケンズがティムを死なせるのにも理由があるということ、物語は必ず誰かの視座によるということを示してもいる。「クライマックス」はディケンズスクルージクリストファー・プラマー)、すなわち彼と「彼の心の染み」とのパワーバランスが逆転する時、自分の心の中をしっかと見て掴んだ時に訪れる。


映画は「アメリカ紀行」の元になったディケンズからフォースターへの書簡に始まり、「クリスマス・キャロル」へのサッカレーの批評で終わる。これらの使い方が上手くて、新たなクリスマスの朝に読まれる「愛と恥の間を揺れながら…」には涙がこぼれそうになってしまった。