ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ


こんなの絶対助からないだろ!というホラーそのものの冒頭からうってかわっての、主人公マイク(ジョシュ・ハッチャーソン)のドラマがあまりに丁寧。朝の腕立て伏せ、家賃滞納の貼紙、まだ幼い妹のアビー、天井に貼ったネブラスカのポスターと「自然音」のカセットテープの意味、その日常に「廃墟となったレストランの夜間警備」が少しずつ入り込んできて溶け合い話が転がり始める。『小さな恋のものがたり』『テラビシアにかける橋』から見ているジョシュの演技はいいけれど、ハンガーゲームシリーズの印象がついて回っているのかいつも陰があり、明るくロマンティックな役もやってほしいなと思ってしまう。

アビーの親権を金目当てに狙う叔母(メアリー・スチュアート・マスターソン)が、レストランを荒らしてマイクをクビにするという彼に近しい兄妹(妹の方はマイクを好いている)の計画を受け入れるのに、まるで80年代の、例えばグーニーズのギャング一家を今見ているような非現実さを覚えたけれど、不思議と映画の瑕疵に感じない。マイクに仕事を紹介したカウンセラーのフレディ(マシュー・リラード)も見回りに来る警察官ヴァネッサも登場時から私情まみれで現実味がないけれど変ではない。ともあれこの設定でまずは「悪者」たちがマスコットに残虐に殺されてくれるのでありがたい。

原作に無知な私には「ファイブ・ナイツ」の意味が分からなかった程その要素が薄いのと、マイクに感情移入した場合に恐ろしいのが店内のマスコットよりも彼が毎晩ある目的のために自ら見る夢であるというのは元のゲームのファンには物足りないかもしれない。私には全編十分楽しく、感じのいい学校の場面からの「絵は言葉が発達する前にものを考えたり伝えたりする重要な手段」というのが最後に生きてくるのも面白かった。同じく子どもの、誘拐じゃないけれど虐待を扱ったハ・ジョンウ主演『クローゼット』(2020)を思い出しながら見た。