犯罪都市 THE ROUNDUP


冒頭、遠く逃げ込んだ異国の空き地にとめたバンに同胞を誘い込んで殺すカン・ヘサン(ソン・ソック)と、ソウルの路地で群集に写真を撮られながら立てこもり犯を捕まえ新聞にまで載るマ・ソクト(マ・ドンソク)、闇と光の対比。韓国の警察が韓国人を助けなくてどうすると追放されそうになるもベトナムに粘っていたところ、金に執着するカンが母国に戻りソクトのいわば縄張りで二人は対峙することになる。巣から明るいところへ引っ張り出された動物のようなカンが、交差点で声をかけてきた警官を一撃して群衆に怒鳴る場面が白眉。

ソン・ソックは『サバイバー 60日間の大統領』でのバスケに『私の解放日誌』の幅跳びと、長いドラマにおいて一度だけ驚きの身体能力を見せるキャラクターを演じてうちらを魅了してきたのが、本作でのほぼ最初のアクションシーンである対・殺し屋との集団戦の長丁場はその印象を塗り替えるのに十分。程なく同じ場所でのマ・ドンソクとの対戦、最後のバスでの一戦もよい。バス内での戦闘なら昨年『シャン・チー テン・リングスの伝説』のばちばちに決まったのを見たものだけど、この映画の「自然に見える」戦闘には魅力がある。そもそも二人とも背丈はそう高くないのがいい、葬儀のエレベーターでのカンの技などそれが効いていた。

とはいえこの映画は私には、マ・ドンソクとソン・ソックの素…どの出演作を見ても受け取れる、本人から漏れ出ているんであろう要素をうまく活かしているように思われた。前述のバスでの一戦の直前にカン・ヘサンが窓の外を見やるあの顔などいい例。前作『犯罪都市』が全く響かなかったのに今作が楽しかったのは第一にそのため、第二に実録もののような犯罪描写のリアルな面白さゆえだろう(「カーチェイス」ではない車の使い方も却って新鮮)。オープニングからの、いわゆるイエローフィルターだけが残念だった。

下手に女性を登場させず一人に絞った「妻」のキャラクターも見易くてよい。ちなみに映画の終わり、カンは「お前を殺す、家族もな」と放ってソクトに顔を…されるんだけど、このシリーズはソクトの家族の描写がないのもよい。働いていようと家にいようと「主人公の妻」の存在にはうんざりだからね。まあ家族というか女性のパートナーが欲しいという描写はお約束のジョークとして毎度冒頭にあるんだけども。