今年を振り返って

今年劇場で見た映画の中からお気に入りベスト10を、観賞順に。

『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』(感想)…ワクチン接種の予約の際に感じた複雑な気持ち、パートナーとの関係は世界へ開かれていなければならないのではという思い、割り切れないロマン、その時の自分に近しい色々が詰まっていた。

『声もなく』(感想)…いまだ「息子じゃないから」と身代金をしぶるような家庭で育ち、大人の男の機嫌を常に伺って生きている少女の描写がこの映画を特別たらしめている。彼女とユ・アイン演じる青年との触れ合い、別離。

『金の糸』(感想)…1978年作『インタビュアー』から受けた印象がこの新作では言葉でもってはっきり語られていた、生を楽しむことこそ何とか生き延びてきた私達ジョージア人の才能なのだと。アヴァンタイトル始め独特のセンスに魅せられる。

アンネ・フランクと旅する日記』(感想)…いつの時代にも存在する、物語の流通に伴う危険性への皮肉によって、『アンネの日記』が何度も映像化されてきた理由が分かる。これまでの映像化作品を改めて見直したくなる。

『ニトラム NITRAM』(感想)…「クリス・ヘムズワース」にはなれないオーストラリアの青年とその家族、世界のふちにかろうじて引っ掛かっている人々の物語。ジュディ・デイヴィスとエシー・デイヴィス。

『マリー・ミー』(感想)…『コーダ あいのうた』と本作にはアメリカ映画の底力を感じた。オーウェン・ウィルソン演じる教員の言動もよい。お伽話から突き落とされて上って来るというのには『魔法にかけられて』も連想。

『恋愛の抜けたロマンス』(感想)…日本料理屋でチャミスルを飲みながら(!)のおしゃべりは今年見た映画の中でも屈指の名場面。回想シーンの使い方も新しくエロい。

『秘密の森の、その向こう』(感想)…未来へ向かわない時間、もっと言うなら役に立つことばかりを求められる昨今見ると、その「止まっている」豊かさに涙が出そうになった。母が娘に「私達の子」を見せるのは近年のどの映画のどの場面より逸脱しており面白かった。

『オルガの翼』(感想)…現役アスリートが演じるオルガの、その心境をも映し出す体操シーン、ああいうものこそスクリーンで見る価値がある。厳しく辛い状況の中でも女同士はしゃいで笑い合う、朗らかという言葉を久々に思い出した場面が忘れ難い。

『ミセス・ハリス、パリへ行く』(感想)…ギャリコの原作のエッセンスの幾らかを再確認、違うアプローチを楽しんだ。労働者は「見えない存在」じゃないと訴える、どこへ行ってもぶちまけられたままの街路のゴミが見事。

次点、というかほぼ同じくらいよかった10作…ひかり探して/コーダ あいのうた/オートクチュール/ふたつの部屋、ふたりの暮らし/マイ・ニューヨーク・ダイアリー/不都合な理想の夫婦/PLAN 75/スワンソング/サポート・ザ・ガールズ/狼と羊