ザ・コンサルタント



とても面白かった。「銃撃戦」のアヴァンタイトルは、誰かが誰かに後ろから銃を突き付けられるシルエットで終わる。こっちかなと見ていると、それこそ後頭部に銃を突き付けられて違うところに意識がいく、それが繰り返される、という感じの映画だった。
タイトル後の、施設の一室での一幕も素晴らしく面白く、引き込まれる。これもまた、「パズル」の最後の一ピースがはまるのを「表」から見た図という、場面が換わる直前のカットがとてもいい。


(以下「ネタバレ」あり)


冒頭の一室からずっと、自閉症スペクトラムであるクリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)には「表情カード」がついて回る。他人と一緒の時には「苛立ってるな」「怒ってるな」とそれ(でもって学習したこと)を利用して交流する。もしかして、彼にとっての義肢のようなものかもしれないとも思う。
よく分からなかったのが、彼が射撃の練習時に標的に顔、というか「表情」を描き込むこと。ああいうのって「一般的」なんだろうか。始めは笑顔じゃないが、銃撃戦の起こるあの日にはメロンを笑顔にしている。


会話シーンがとてもよく出来ており、中でもクリスチャンとデイナ・カミングス(アナ・ケンドリック)のそれがいい。二人して素っ気ないランチを横にしての、「冗談だ」から最後の「よい一日を」までの初めてのプライベートなやりとり、「数字の中に目に見えないものを見つけるのが好き」な彼女との、「それ」を目の前にして喜び合う様子。
無理やりなぞらえるなら、同じギャビン・オコナーの「ジェーン」は、はぐれ者三人が居場所を守る銃撃戦がクライマックスだったけど、こちらでは、人付き合いをしたくとも出来ない主人公が、たった一人を守るため、赤の他人が誰も入れまいとしている家へ押し入って皆殺しにせんとする(するとそこにはなんと、彼にとって大切なパズルのピースがあったのだ)


同監督の「ウォーリアー」同様、「兄弟(姉妹)」が執拗に描かれる。メディナ捜査官(シンシア・アダイ=ロビンソン)が「そこ」に来る発端は姉への愛情である。クリスチャンがそうと知らず接近した弟のブラクストン(ジョン・バーンサル)は、社長の命でその妹を撃った後であった。銃弾を受けた額が映る写真の兄と妹に、クリスチャンは弟を思い出したろうか。ちなみにこの「接近時」に通りの向こうから撃たれた時のベンの顔がいい。ここぞという時…大抵は銃を手にした時、の彼の目が魅力的に撮られていた。
振り返れば、身近な人を大切にするやつは生かす!しないやつは殺す!というシンプルな話である。前者の人々が最後には皆、「一人」でそれぞれの道をゆくいう結末が好みだった。