イバンリのチャン・マノク!


アジアンクィア映画祭を13年ぶりに開催するにあたり韓国特集としたのは「レズビアンの」「明るく前向きな」作品が多かったから…との前説に続けてまさにその通りの本作を観賞、2024年イ・ユジン監督作品。

レインボーフラッグからの、お祝いのチャプチェやジョンの夜のお店ならでは?の盛り付けからの、昔ながらの内装だなと見始める(後のやりとりで店が「都心」にはないことも分かる)。ソウルで長年レズビアンバーを経営するマノク(ヤン・マルボク)が最近の若い子はと文句を垂れまくり孤立してしまう冒頭に、コミュニティ内でのこういう断絶の描写はあまり見たことがないなと思っていたら、これは彼女が色んな孤独をなくすため村長に立候補するという話なのだった。

マノクいわく若い子は無料のイベントの日しか来ない、安いソジュしか頼まない…後に母の墓前での兄達とのやりとりで彼女が金銭的にどれだけ苦労してきたかが分かる。いわく年上を敬わない…彼女が村に戻ると独居の年寄りが放置されている。誰だって孤独を感じたくないはずだと思うマノクの「村長になっていいことをしたい」とは「誰も孤独を感じない場にしたい」との意味である。

引っ越しトラックのレインボーフラッグにあ…と自転車を止めるトランス男性の高校生ジェヨンは、レズビアンバーの店長なんてすごい!と興奮する。ジェヨンの「ソウルに連れて行って」とマノクの村に残る決意のすれ違いに一瞬悲しくなった私は浅墓だった、選挙の応援にプライドパレードが田畑の中をやってくる場面に表れているように、これはソウルと村にパイプが出来る話なんだから。そもそもマノクが頑張れるのだってソウルに仲間がいるからなのだ。

ジェヨンへの男子学生らの苛め、警察や教師による二次加害、マノクの元夫によるアウティング(しかもその場で配信!)などの残酷さに何で弱い方が踏ん張らなきゃならないのかと落ち込む心を、レズビアンのリアルな命とでもいうようなものが引っ張り上げてくれる。マノクがうっとりするのも分かる、あんなかっこいいキム・ジョンヨン初めて!の腐れ縁の元カノ、クムジャとの50絡みの女二人の痴話喧嘩や「翌朝」のよれよれTシャツにいびき、「昔の私は女に目がなかったもんだ」なんてセリフ(今だって美人に目ざとい)、全てが生き生きしており素晴らしかった。