ハッピー・ゴー・ラッキー



マイク・リーの2008年作を、三大映画祭にて観賞。ロンドンを舞台に、サリー・ホーキンス演じる主人公ポピーの「happy-go-lucky」な日常を描く。


冒頭、自転車で町をぶらつくポピー。カメラと彼女の間を通り過ぎるトラックの荷台や歩道の柱などが、「普通」の映画と違うというか、「映画の意図」に従ってないというか、そもそもそうした「意図」が無いように思われて、もっと彼女を「ちゃんと」見せてよ、ともどかしい反面、大げさだけど、映画の中に一緒に生きてるような感覚を覚える。
書店で店員の男性に「すてきな帽子ね」などと話しかけるも相手は無視。しかし彼女が「不愉快?」と問うと「いいや」と答える。自転車を盗まれバスに乗り、大きく揺れると隣の中年男性に話しかける。彼もそれなりの笑顔を返す。彼らの心情は「分からない」。これにも冒頭と同じ、映画の中に居るような感じになる。


ポピーは独身の小学教師、同業で10年来のルームメイトのゾーイとマンション住まい。仕事の後は、なんとか教室で体を動かしたり、バーで飲んだり。服装は大抵、網タイツに「履きやすい」ブーツ。サリー・ホーキンスは「デザート・フラワー」でもロンドンのtopshopの店員で、こんな感じの格好して、女同士で暮らしてた。彼女ほどそういうのが似合う女優もいまい。素晴らしい口のゆがみ具合に見惚れる。あんなウザ女を「公認」で演れるなんて、楽しいだろうな(笑)
「未来を生きる君たちへ」のくそ教師(そういうふうに描かれているわけだけど)にむかついた後なので、ポピーの、「発見」したらすぐ「対処」、プロ任せというやり方は非常にまともに見えた。まあ元の「世界」が違うともいえるけど。
「人生設計」を説かれるくだりでは、彼女が「30歳」というので驚いた。30じゃ全然アリ、すぎるだろう。


いわゆるラブシーンがやたら「リアル」で、へんな言い方だけど、まるで自分がしているみたいに感じられた。「女体」で「エロス」を表現してる映像にはない心地よさ。また、翌朝の何気ないいちゃつきや、男と知り合った後に教官の車に乗り込んだ時の、いつもと違う空気(自分のせいでも、相手のせいでもある)などの感じがよく出てた。


ラストシーン、ポピーとゾーイが公園の池でボートを漕いでいる。オールを一つずつ持って。
「タバコをやめようかな」と言われたポピーが「私は何をやめようかな?」と返すと、ゾーイいわく「『いい人』をやめれば?」。え、ポピーってたんに好きで「能天気」なわけじゃないんだ、と初めて知りびっくりした。そういう驚きを味わうのも、一つの映画の見方か。もっともゾーイがどういう意味で「いい人」と言ったのかは分からない。どうにも解釈できるところが面白い。
ちなみにゾーイはほんとに「ゴージャス」で、私こそパートナーになりたいと思わせられた。