ブライト・ライツ:キャリー・フィッシャーとデビー・レイノルズ主演


Amazonプライム・ビデオにて観賞。2016年制作、原題「Bright Lights : Starring Carrie Fisher and Debbie Reynolds」。見たいと思っていたのがアマプラに入っていたとは気付かなかった。作中引用される、キャリー・フィッシャーによる小説を元にした映画「ハリウッドにくちづけ」も配信されていればいいのに。
オープニング、デビー・レイノルズと彼女の二人の子、キャリーとトッドのホームビデオに現在のデビーとキャリーの「(これらは)あなた達が幸せそうだから撮ったの」「でも皆に見せたじゃない!」なんて、字面じゃ分からないだろうけど楽しげに、軽快に言い合うやりとりが被る。ふと、このドキュメンタリーは作り手の存在を表に出さないタイプのそれだろうなと思って見始めたら、やはりそうだった(トッドが出演の他に制作も務めているが)。全くもって二人の映画である。

序盤はデビーのMGM時代の出演作が多々挿入される。現在の彼女が本当にいい体験だった、ショービジネス一筋でやってきた、やめるつもりはない、などとポシティブに当時を語るので楽しく見られる。しかし中盤キャリーが「デビーは元気なふりが上手い」、トッドが「MGMにいつもベストな状態でいるよう叩き込まれたんだ」と話すのを聞くと、本当のところはどうだったのか分からなくなる(それは勿論、分からなくて当然なのだ)。
作中の80台のデビーは三つの活動を並行して行っている。長年集めていたハリウッド映画の衣装や小道具を処分し、ラスベガスでショーを行い(キャリーいわく「誰もが最後はラスベガスに行く」)、生涯功労賞の受賞式に出席する(見事なスピーチをするのに驚かされる)。このうち借金してまで行っていたという最初の活動につき、博物館を設立するために何十年も尽力したが叶わなかったというくだりはまるで、彼女以外の人間は私生活では映画に興味がないことの表れのように見え寂しくなった(実際どうだというんじゃなく、そういう比喩のように見えるという意味)。

女優経験のある妻と暮らすトッドいわく「同じ業界の人と結婚することだ」。同業者同士ならそりゃあ利があるだろうけど、結婚は選択によるが親子の間柄は自分で選べない。このドキュメンタリーの根底には、自分で生まれを選べなかったことに対するキャリーの思いがずっと流れている。「ハリウッドにくちづけ」からの引用に「私(デビー)のせいで薬物に走ったんでしょ!」「まさか!」。「薬物依存まで親の影響と言われたくない」という彼女の強い気持ちが読み取れる。
ちなみにこの映画ではキャリーがデビーと、ではなくデビーのステージに立って歌う場面が二度あるが、現在の二人を捉えた二度目には、彼女は母が選んだ「I'll Never Say No」(「私にぴったり/『あなたに何を言われても決してNoと言わない~』」)の歌詞を一部変えて歌うのだった、母が心から心配した躁鬱病と薬物のネタを織り込んで。

作中一度だけ映るキャリーの涙は、授賞式でデビーが「ちゃんと」できなかったらどうしようという混乱によるもの。近年参加するようになったという「スター・ウォーズ シリーズ」の集いの撮影会で椅子に座ってファンと次々ポーズを決める様子には、デビーが映画の中でピアノの上でくるくる踊っていた姿が重なった。