
「サタジット・レイ レトロスペクティブ2025」にてデジタルリマスター版を観賞、1965年作品。
茶園の経営者ビマールによれば「信じられないだろうが年に一人は遭遇する」困ったベンガル人の一人だが他にない一人であるアミ(ショウミットロ・チャタルジ)の長い回想シーンがかつての恋人、今はビマールの妻コルナ(マドビ・ムカージー)の「あなたに必要なのは時間じゃない」で幕を閉じると、終了終了、このあと何があるんだと思うが、ビマールの「見たところ君はロマンチックな男だな、ゆうべ妻と推論し合ったんだ」の通りアミの執着により話はだらだらと続き、私にも思いがけないラストに至る。その他の価値観がどうであろうと女を「getする」と考える男ばかりの社会において、女にやれることはないが言えることはある、いや言えることしかないというのが正しいか。
「朝は紅茶だけなんだ」が意趣返しされる朝食の席でのやりとりが三人の在り方の根底に流れるものを説明している。ビマールいわく「支配人である私は支配人としか食卓を囲まない、君が副支配人なら一緒に食事はしない、英国が保ってきた身分制度を支持している、始めは良心が痛んだが一度蓋をしてしまえば平気だ」。朝の邸宅は明るく風通しがよいが、マドビ・ムカージーが「働きに出る」と本作を同じセリフを口にし実際に働き始める『ビッグ・シティ』(1963)のそれとは異なりあまりに空虚だ。ウイスキーと睡眠薬の家、自身も少しだけ口にして「君も一人前の男だ」と言われたアミは都会に帰ってどんな脚本を書くだろう。

ル・シネマ内ドゥ マゴ パリ プチカフェで、インド映画上映記念「カレー風味のタラのブランダードと紫キャベツのサンドイッチ」を食べた。インドの海辺の町をイメージしたメニューだそうで、タラとジャガイモのペーストにカレー粉というのが懐かしいような初めてのような味わい。付け合わせのピクルスもよかった。