37セカンズ


新宿に始まり序盤に主人公ユマ(佳山明)が通うのが歌舞伎町、前半は東京映画といってもいいんだけど、私にとっての東京とは違うな、でも既視感があるなと思いながら見ていたら、そうだ、NHK少年ドラマシリーズ。子どもっぽいという意味じゃなく、これから巣立つ者の目で見た街とでもいおうか、そういう感じなのだ、この東京は。

セックスは不可欠なものじゃないし「まだしていない」から「もうした」へ移行するものでもないと断っておいて言うけれど、この映画には、セックスをしていない時間…便宜上「まだ」していないと言った方がやはり分かり易いか…にしか無いまなざしがあるように私には見えた(先に書いた街を見る目とも繋がっていると言える)。ここに描かれているセックス観はそう好きじゃないけれど、「セックスシーンは無いんですけど…」「いいよ、それでも」との終盤のやりとりは素敵だ。

世の女は皆「運よく生き延びた」と言ってもいいから、母と娘の「襲われたらどうするの」「私のことなんて誰も気にしてない」には(気にするとかそういう問題じゃないんだ、という)大きなすれ違いがあり、どちらに立つでもなく私自身がそのことを考えただけで身震いするほどだけども、それでもそう、被害を恐れる側がひっこまなきゃならない道理はないからこの映画が正しい、いや映画ってそういうものだと思う。

最後に追記的に…これは本当に個人的な感想だけど、本作の双子の姉の、ルックスからたたずまいから何から、あの「決して手の届かないもう一人の私」ぶり、あれは私が愛してきた少女漫画にしか無かったもので、スクリーンで見てとても胸にきた。