パラサイト 半地下の家族


昔、とある芸能人が毎日数時間入浴するという話題に触れて、災害時にはどうするんだろうと言ったらそういう人はそういう目に遭わないんだよと返されたものだけど、階段を下りた息子ギウ(チェ・ウシク)の「(大学生の友人)ミニョンだったらどうするかな」に対する娘ギジョン(パク・ソダム)の「こんなこと起こらない!」がまさにそれなのだ。

(以下少々「ネタバレ」しています)

「運転手」キテク(ソン・ガンホ)が「家政婦」チョンソク(チャン・ヘジン)の尻を掴むのは、普段と違う「上品のふり」にそそられたからと思われる。パク(イ・ソンギュン)と妻(チョ・ヨジョン)も逆、逆というからにはつまり同様で、その言葉は使うなよ、うちの品が落ちるからな、の「カーセックス」と「パンティ」にこそ欲情する。言ってみれば格差に性欲が生まれるということだ。

印象的だったセリフは地下暮らしの夫が口にする「老後は愛情で生きる」。例えば今の日本政府にとってみたら、何て都合のいい認識だろう。選択肢のないそれは最悪である。この言葉の背後に映るのは地下夫婦の枕元の使用済みコンドームの束で、穿った見方をすれば、窓の無い場所では格差に性欲を抱く余裕すらないのだと言える。

それにしても後半、映画ってこんな色々でもって飽きさせないようにする必要があるのだろうかと思ってしまった(そりゃ好き好きの問題だろう、でおしまいだけども)。例えばこの映画の「計画」は「家族を想うとき」の「努力」と通じるけれど、そちらがあの一場面しか出てこないのに対し「計画」は何度も上手い具合に使われて「キーワード」のようになってしまう。例え映画が結局は半地下に終わっても、冒頭のように身に染みてはこないのだった。