LIFE!



公開初日、新宿ピカデリーにて観賞。小さなスクリーンでの上映だったためか満席。
ベン・スティラー監督・主演による、映画「虹を掴む男」(原作は未読)のリメイク…といってもそりゃあもう、全然時代が違うんだから、全然違う話。



「この親指の持ち主が見つかるなんて、奇跡だ!」
「この町に住んでるのは8人きりなんだから、見つからないわけないさ」


時計が刻まれる音、ベン演じるウォルター・ミティが電卓を叩く音、数字を書き込む音、それから、こちらが期待してるのになかなか聞こえてこない、一つの音。ベンの後ろ姿の、半袖のワイシャツから見える肘がしわしわでびっくりした。そういや「オール・イズ・ロスト」でもレッドフォードの肘のたるみに驚いたものだ。老化が悪というわけじゃなく、向こうは監督作じゃなくともレッドフォードらしい映画だったけど、こっちも負けてない、まさにベンの、キャリアを積んだ彼の映画。すごく面白かったわけじゃないけど、少し泣きそうになった。ダニー・ケイの早口や歌に相当する?彼らしいギャグの数々も嬉しい(「ベンジャミン・バトン」ネタのくだらなさといったら素晴らしい!笑)


映画「虹を掴む男」は巻き込まれ型サスペンスコメディで、ウォルターが体験する(させられる)のは「非日常」の世界だけど、本作の彼が出向くのは「普通」の暮らしが営まれている世界。「世界一美しいもの」の近くでも子ども達が遊んでいる。ウォルターが「奇跡」を感じようと、現地の人達にとっては何でもない。そもそも「冒険」=「本当に在ると『知って』いるところ」へ出掛けて行くこと、というのが、考えたら当たり前かもしれないけど、面白いなと思った。もし60年…いや30年後にでもまた「The Secret Life of Walter Mitty」の映画が作られることになったら、主人公はどんな冒険に出るだろう?なんて考えた。


ウォルターの「冒険」は全て、思いを寄せるシェリル(クリスティン・ウィグ)から生まれ、支えられている。二人が会社の近くでお喋りする際、彼女の「推理小説だと…」なんて趣味の話を聞く彼の束の間の顔がすごくいい。ウォルターって、いつも「外」ばかり向いており「自分」の存在に気付いていない。でも、彼が「自分」を空想の中にしか見なくても、その姿は周囲の人々に反射している。そのことが、彼がずっと追い求めた「アレ」にも表れている。見終わって、変な言い方だけど、上記の表情にふと惹かれた自分が誇らしくなった(笑)


以前のウォルターからしたらまさに「地の果て」で、「尊敬していた」冒険家のショーン(ショーン・ペン)とようやく会うも、事の真相を知ったウォルターは「なんでそんなことを!」「大切なものなのに!」と文句を言う。それは普段の彼の思いからくる言葉。その後、二人が並んで「美しいもの」を…同じ方を見る場面がよかった。ラストシーンでも、ウォルターはシェリルと並んで、同じ方へ手を繋いで歩き出す。あんなにスタッフロールの長い「大作」だろうと、心に残るのはそういう小さな転換。それもまたベンらしい!