チア・アップ!


キャロル・キングの「Bitter with the Sweet」にのせてダイアン・キートンがスバルのワゴンを運転するオープニングタイトルに面白いキートン映画の匂いを嗅ぎ取っていたら…尤も今世紀に入ってからの彼女の主演映画は大体面白い、お金持ちの話ばかりだけどね…やはり面白かった。キートンらのチアリーディングを見た老若男女がそれを真似て楽しそうに踊る映像で映画が終わるのに、ごく普通の高齢女性の活動がこんなふうに皆に影響を与えることがもっとあれという思いを感じた。よくあるタイプの映画だけど、楽しいし価値がある。

まずはガールズムービー、特にキートン演じるマーサとジャッキー・ウィーヴァー演じるシェリルの友情ものとして楽しい。「男性が引っ越してくればと期待してた」が第一声だった隣人シェリルの(これだって全然、仲良くなれそうなセリフだけど!)「女友達もいいね」。始めの晩は迷惑千万だったのが、マーサが電話に出ないとなれば「風呂場で倒れてるかも」と夜中にやってきて、「会いたかった」となるまでの似てない者同士の付き合いが始まる。孫の通う高校で代理教員をしているシェリルが生徒のクロエに「資格はあるんですか」と問われた時の返答がいい。

以前にも書いたように、団塊世代の私の母が教員になったのは大学を出ても男と同じ条件で働ける堅実な職が他に無かったからで、国が違えど通じるところはあると思うから、マーサが「元教師」と言う裏にはそういう事情があるのかもと想像する。アリス(リー・パールマン)からチアへの参加を夫に反対されていると聞いた時の反応にもそうした考え方の根が窺える。練習再開時の鏡の前でのワークショップのような一幕には彼女がどんな教師だったか想像させられた。「タッチ・ミー・ノット」でもつくづく思ったけれど、ああいうワークショップは安全安心が第一で、ああいう場があることが羨ましい。

前述のアリスの「夫に『俺が死んだら参加していい』と言われた」から場面変わって夫の葬式という流れには笑ってしまったけれど(演じるリー・パールマンの実際の夫がダニー・デヴィートであることを考えるとちょっと面白い、妻殺しの映画の印象が強いからね)、このくだりやヘレンを始終見張り管理している息子への女性達の態度などからは、マーサが高校生のベンに言う通り「人生は短いんだから」、いや確かにそうなんだけど、特に高齢女性は我慢して何かを待つのをもうやめようというメッセージを勝手に受け取った。マーサがベンに車の運転を教えるのに縦列駐車からの発車で始めるといういきなり加減もよかった。