同時期公開のテイラー・キッチュ出演作繋がり、兼、予告から想像していたより面白かったアメリカ映画繋がり。
▼「オンリー・ザ・ブレイブ」は実話を元に制作された映画。ジョシュ・ブローリン演じるエリックが出動前に持ち物を床に広げてチェックする様子に、ベテランのように見えるのに、いやベテランこそああするのかなと思うも車には「訓練中」の文字。どういうことだろうと考えているうちにAC/DCに乗ってプールにアレが下りてくる…という冒頭に引き込まれる。
何度も挿入される、空撮で捉えられた、隊員達が一列になって進む姿は、それ自体が一匹の動物か何かのようで、カメラが寄って「それぞれ」だと分かるのが面白いのと同時に、そこから離れて一人になる場面に胸騒ぎを覚えさせる。この映画にはそこここに一触即発のムードが漂っており、何でもない会話シーンにも危機がそこまで迫っているかのような空気がある。
冒頭、妻アマンダ(ジェニファー・コネリー)とエリックが、バスタブで「どうしたの」「特に話す程のことじゃない、嫌なことがあったんだ」との会話を交わす(その後夫はおおまかなことを口にする)が、私にはこれは、人は家族と居ない時に何をしているのかという話に思われた(エンドクレジットで「本人」を確認すると若くして妻子がいる=「家族を持っている」隊員が多い)。何をしていたの、と誰にも聞かれないのがブレンダン(マイルズ・テラー)なんである。
▼「アメリカン・アサシン」は2010年に出版された同名小説の映画化。まずはディラン・オブライエンが素晴らしく、彼の今の輝きを留めた代表作になるだろうと思った。冒頭に流れるアンドラ・デイ「Mistakes」のメロウさがこの映画の「感じ」を表しているかもしれない。クレイグボンドぽさもあるがゴージャスじゃなく地に足が着いている。私には丁度好みだった。
冒頭の一幕を悪夢として目覚めたミッチ(ディラン・オブライエン)が、ケネディCIA副長官(サナ・レイサン)に「あの体験は訓練では与えられない」なんて非道に推されつつ、スタン(マイケル・キートン)の「お前の目的はなんだ」に対し「奴らを恐れさせ、眠れなくさせてやる」と答えるところで映画に線が一本、きれいに引かれる。ここで惹き込まれた。「殺されても殺す」心意気を実際に見せる特訓風景、ナヴォーナ広場が特に素敵に映らず、実際に行ったら結構狭いのかななんて思わせる(私は行ったことが無い)リアルさ、(「主人公側」の人間の)銃を撃つ時の憎々しげな表情など、色々と面白い。
男の靴下に注目させる映画は面白いものが多いというのが私の持論だけど、本作もキートンの白いソックスからの彼のスーツ姿がいい。山中から「上司」に会うのに昔からあれしか持っていないのを着てきたのかなと思う。この場面を皮切りに彼の愛らしさが垣間見える。誰しもが完璧じゃない。