ハロウィン KILLS


アヴァンタイトルを丸々使って1978年にフランク・ホーキンス保安官(ウィル・パットン)の身に起きた出来事が描かれるのに、彼ってそんなに「重要」なキャラクターだったっけと違和感を覚えていたら、オープニング、彼から始めるんだと思わせられたアリソン(アンディ・マティチャック)のボーイフレンド・キャメロン(ディラン・アーノルド)の「殺された人にも愛し愛された人がいる」とか何とかいうセリフの通り、映画はまず、ホラー映画でざくざく殺されていく人々も人間なんだ!と言ってくる。

しかし、「誰彼かまわず」襲う殺人鬼というフィクションに大いに救われ楽しめる人が、私を始め特に女性には結構いると思うんだけど(災害などではなく人の手によってという点が重要である)、3年前の時点で既にその、ある種の平等性を得ているこのシリーズで今更死んだ人がどうとか言われても、知らねえし、お前ら誰だよと少々ノイズになってしまった。ジャンル映画の進化として「透明人間」や「キャンディマン」などが覆い隠されていた、すなわち抑圧されていた部分に光を当てたのに対し、ここでは世界それ自体が違うものと化してしまっているから、心動かされない。

(以下少々「ネタバレ」しています)

本作はジェイミー・リー・カーティス演じるローリーが大怪我を負って運ばれた病院から出ることなく終わる(出ようとして痛み止めを打つのが奇妙な見せ場)。「死んだ人も皆、誰かの何かだったんだ」によって院内が大騒ぎとなる中盤以降、映画は群衆の恐ろしさを見せてくる。伝播した恐怖に支配された集団の暴走で無実の人が自死する。映画の終わりのローリーの「目をそらしちゃだめ」から、見ないのは悪だが見るならきちんと見なければと言いたいのだと分かるが、この辺りの描写は丁寧さや新鮮さに欠け訴えるものがなかった。

特筆すべきは、「キャンディマン」同様冒頭よりゲイのカップルが出てくること(レズビアンではないわけだけども)。少なくとも三年前には完全に消されていたセックスの匂いがここにのみ濃厚に漂っていた、ただし昔のように不幸ではなく幸せなものとして。