ジョジョ・ラビット


10歳のジョジョがかっこよく制服を身に着け家の外へ飛び出していくと流れ始めるアヴァンタイトルの「抱きしめたい」は、まずは当時の人々のヒトラーへの「熱狂」に掛けられている。この時点で、しまいまで見ずに、そんな考え無しな…と思わせない何か、何だろう?がワイティティの映画にはある。年始に見た「ロング・ショット」の二人の信条がふと脳裏に浮かんだ。

息子をヒトラー・ユーゲントのキャンプに行かせたり怪我をして帰ってくれば事務所に乗り込んだりといった、始め掴めないママ(スカーレット・ヨハンソン)の行動原理が「できることをする」であると途中のセリフで分かる。匿っている少女エルサ(トーマシン・マッケンジー)の前で「息子かあなたかどちらかを選ぶとなれば…」と打ち明けもするし、「一人でも生き残ればあなた達の勝ち」と、一瞬残酷なのではとも思える言葉も放つ。それも「できることをする」一環だ。

リルケも言っている、『愛する人を束縛してはいけない』って」。それは当初、自身に都合がいいよう右から左へ(左から右へ)書き写されたただの文だが、「愛こそ最強」というママ=ボスの導きによってジョジョの中に正しく根付く。人には本と導きが必要。そしてそう、恋愛自体がナチ的なものへの反抗に違いないのだ。