グリーンルーム



アントン・イェルチン主演作。とても面白かった。「モヒカン」の口から洩れる大きな息、「ブレックファスト・オブ・チャンピオンズ」。演奏する姿の描かれないレコード、首を抜かれて殺されるマイク。「車の事故の翌朝」に始まるので冒頭少々感傷的になってしまったけれど、そういう気持ちは早々に飛んで行く。そういう映画だった。


「この手」の映画にありがちなセリフの一つ一つが、それ以外の描写ゆえ実に心に響く。終盤アントンがゲームの話をする時、私もこの場にいたら生きるためにそうして打って出てもいいかもしれない、いやそうするだろうと思ってしまった。そして「犬」。「この手」の映画なら普通、最後のあの一匹は死の間際に「悪い奴」、ベタを極めるならパトリック・スチュワート演じるネオナチのリーダーを襲うでしょう。でもあの最期!いや、そうだよね、それが正しいよねと思えてしまう。そういう映画だった。


(以下「ネタバレ」です)


オープニングはアントンの寝顔、起きると彼はまず「サム」とバンド仲間の名を呼んで起こす。演じるアリア・ショウカットが、私がこの映画を見た目当てでもあった。彼女の最期も彼の声と共にある(聞こえていたかどうだか分からないけど)。「ランナウェイズ」ではベーシストだったけどこちらではギタリスト、普通っぽさが素敵だった。