ニード・フォー・スピード



これは面白かった!レースもの、興味無いどころか苦手なのに。「レース」そのものの描写がそう長くなく、ロードムービー仕立てなのがしっくりきた理由の一つかな。
スーパーカーで大陸横断」という柱の周りに、「ヘリが下から登場」(大した画じゃないけど、まさかのあそこから!)「名物DJ」(「大陸横断」の一方でこちらは部屋から一歩も出ないというのがいい/マイケル・キートンというキャスティングも絶妙の有り難さ・笑)など「アメリカ映画」の面白要素が満載。何でもないような道を存分に見られるのに加え、オープニングは朝方、エンディングは夕方の匂いがするのもよかった。


冒頭のレースを見ている時は、あまり楽しい気分じゃなかった。ホームレスを撥ねそうになりながら地元の街中を走りまくる様子に、「死ぬ気になれば私でもこれくらい(!)出来るのかなあ」などとぼんやり考えていたら、主人公トビー(アーロン・ポール)が危機をかわしたことについて、仲間が「運がいいんじゃない、忍耐力があるんだ」。そっか、それじゃあ彼が忍耐強く進んで行く話なのかと思い座り直す。
こんなふうに、不思議とタイミングよく「呼応してくれる」映画というのがある。トビー役の役者さんを知らず、なんでこんなおっさんくさい顔と声のやつが主人公なの?と釈然とせずにいたら、パーティ会場で出会ったジュリア(イモージェン・プーツ)の「Mr.strong, あなたも何か喋ってよ」に寡黙な彼が口を開くと、冴えないと思ってた声が心に響く。音楽が流れてることに初めて気付き、いい曲だと思う。
とある場面で二人が「ぼくの目を見るんだ、瞳は何色だ」「ブルーよ」「君もブルーだけど僕の方が青いな」「そんなことない」と言い合うので、どれどれ確認してやろうと思うもよく見えないんだけど、しばらく後のキスシーンで彼らの顔が交互にじっくりアップになり、存分に見ることができる(イモージェンの方が青いと思った・笑)こういうのが楽しい。


イモージェン・プーツの可愛いこと、スーツケース持ってトイレに急ぐ、ちょこっとどんくさそうな後ろ姿が忘れられない(笑)トビーが出所したあたりで、なんだか辛気臭い話だな…と思ってるところに彼女がやってきて、その顔がアップになると、瞳に引き込まれそうになり、いや、楽しくなるかもとわくわくさせられる。「給油」の際、ほぼ初対面のジュリアとフィン(ラミ・マレック)が協力し合い一瞬で心を通わせる、見切れたジュリアの髪と二人をちらと見るトビーの顔のカット、こういうのが嬉しい。
ちなみに道中(マイケル・キートンによれば「レースの前のレース、たまんないなあ」)妨害してくる車に対し、彼女が「車高を高くしている人間は…」と分析してやり返す場面があるんだけど、このくだりがあるおかげで、「悪役」のディーノ(ドミニク・クーパー)が自分にとって不利な物を後生大事に取っておいているのも、何か理由があるんだろうと思うことが出来る。私にとっては、実に細かいところまで行き届いてる映画だった。