オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜



シネマカリテにて公開初日に観賞。
遭難ものが好きなのに加え、「ロバート・レッドフォードとヨット」と言えば勿論「追憶」、昨年の監督・主演作「ランナウェイ/逃亡者」にもちらと出てきたから、「付き物」のように思っており、楽しみにしてた。予想外の事態に見舞われたけど(笑)とても面白かった。


それ以外何も無い、恐ろしいくらいの海原にレッドフォードのしっかりした声。「(略)All is lost(略)I'm sorry」。何かが静かに画面を横切り暗転、「8日前」に遡る。
寝ていると音がして、水が流れ込んでくる。起き上がり、外に出て原因を確認する。コンテナが舟にぶつかって喰い込み、穴が開いている。こんなことがあるのかと思う。
レッドフォードは喋らないので、彼が何をしようとしているのか、何を思っているのか、ヨットのことも彼のことも知らない私には分からない。BGMもかすかで「説明」にはならない。ビニールテープと塗料で「穴」を応急処置し、削った棒を使って水を汲み出すなんて描写になるほどと思い、酒を飲むのでやけになっているのかと思えば料理をし、髭を剃る(作中髭が生える気配が無いので毎日剃っているよう)姿を、どんな人物なのか知りたくしげしげ見つめる。


レッドフォードの登場時、起き上がると素足に履いたスニーカーに目が行く。舟に衝突したコンテナの中身もスニーカーだ。カメラはコンテナをまた追い、レッドフォードもそのままにはしておかない。気付かぬうちに近付いて来たコンテナが壊したもの(穴が開いたのは丁度デスクの、パソコンなどが置いてあるいわば「頭脳」部分)、そのコンテナから流出する大量のスニーカー、後半に救命ボートを「無視」して通り過ぎるコンテナ船など、何かみたいだと考えるのも面白いけど、まずはただただ「見る」ことが楽しい。
本作の監督はレッドフォードじゃないけど、彼が関わっている映画って、「普通」のことが「普通」に描かれているだけに見えるのに、際限ない「自由」があるようで面白い。相対するのに、アタマの、普段は使っていない筋肉を動員しているような感じがして気持ちいい。同時に、何てことない場面でも何か見逃しているような気がして、傍から見返したくなる。


先に書いた「予想外の事態」とは、一度目の嵐の場面からかなりの時間…救命ボートに落ち着くあたりまで、「船酔い」になってしまいほとんど画面が見られなかったこと。途中でちらと顔を上げると、プチ「ポセイドン・アドベンチャー」状態になっていた(笑)考えたら予想できたものを、楽しみなあまり最前列で見ちゃったから。勿体無いことをした。