幸せのきずな


幸せのきずな [DVD]

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一人の男が、「僕のモナリザ」の名誉を守るために大企業と闘う話。
前半は、グレッグ・キニア演じるうぶな発明家が気の毒で、観ているのが辛いけど、丁寧な作りで面白かった。


60年代のデトロイト。大学教授のロバート・カーンズ(グレッグ・キニア)は「まばたき式ワイパー」を発明し、契約を前提にフォード社に試作品を提供。しかしフォード社は契約を破棄、数か月後に同様のワイパーを備えた製品を売り出す。その日から、ロバートの生涯にわたる闘いが始まった。


原題「Flash of Genius」(天才のひらめき…特許法に関する法律用語だそう)に対し、しょうもない邦題だなと思ったけど、確かに作中では「家族の絆」が強調されている。
主人公ボブは、家族が一丸となってアメリカン・ドリームを達成することを夢見、「チーム・カーンズ」「カーンズ・カンパニー」といった言い方をしきりにする。法廷においても、一人で現れる(当たり前だけど・笑)フォードの代理人に対し、ボブは常に子どもや仲間に囲まれ、「ファミリー」対「非・人間」の闘いが繰り広げられる。ラストシーンで、今は「若者」になった子どもたちが、カフェのテーブルを囲んでクリームたっぷりのサンデー?を食べるのが良かった。


観ていて不意に「ハート・ロッカー」を思い出した。誰かが信念を通すことにより、その過程において、周囲の者に影響が及ぶ。影響の大小、どう感じるかはそれぞれだけど、世の中そういうことって多い。
ボブの妻は、8年目にして「もうやっていけない」と家を出ていく。自分(私)にとっては、ごはん食べたり散歩したりの暮らしで満足してる人とパートナーであることが、幸せの条件かもしれないなあと思った。
中盤、「壊れてしまった」ボブと話した精神科医は、「あなたの書いた本の著者名が突然書き変えられたら?」という問いに、「そういうことにばかり気を取られると、病院のほうがおろそかになる」と答える。色んな人がいるわけだ。


フォードからの示談金の申し出をはねつけたボブは、「FMラジオの発明者が案を盗まれ自殺」という新聞記事の切り抜きを取り出して見せる。うちには同じような境遇の人から手紙がたくさん来ている、皆自分に希望を託していると。弁護士は、彼のそうした話にうんざりしており、手をふって遮る。
「FMラジオ」の話は知らなかったので検索したら、エドウィン・アームストロングという人らしい。ウィキペディアには彼の死に関する記述はなかったけど、何らかの記録のようなものはあるのかな?


映画じゃアメリカの弁護士ってああいう最終弁論ばかりしてるけど、まさか実際もああじゃあるまい。肝心な時に例え話をする人間にろくなやつはいないと私は思ってるけど、ひどすぎる(笑)