ニュースの真相/ロング・トレイル!


現在、ロバート・レッドフォード主演作が二本、劇場公開されている。その「ニュースの真相」でも「ロング・トレイル!」でも、彼の登場シーンは「番組前」だった。でもっていずれも「手」から、というか「手」が前面に出て感情を表していた。前者では手の甲の毛が自信にそよぎ、後者では頭を抱えている。



▼「ニュースの真相」でダン・ラザーを演じるレッドフォードは、「質問をしなくなったら終わり」という精神を体現するアメリカの「父」であり、ケイト・ブランシェットはその「娘」だった。父には自分も預かり知らなかった「子」がいるというのが面白い(笑)


見ながら、「シチズンフォー スノーデンの暴露」でスノーデンが「僕が暴露する内容は僕の人格と切り離して考えてもらいたい」と強調していたのを思い出した。ケイト演じるメアリー・メイプルいわく「(自分を裁かんとする)大騒ぎの後には主旨が何だったのか忘れられる」。
「真相」については、調査委員会(の中で唯一「リベラル」な出自の人物)とメイプルのやりとり「あなたは(略)がありえるとは思わないのですか?」「(しばし沈黙の後)思いません」をどう受け取るかによって決まるのだと思う。その後社屋を出た彼女に、弁護士は言うのだ「あなたを信じます」。


「リアル」さを感じたのは、ダン・ラザーからの一行メールに元気になったメイプルが、ふとネットの書き込みを検索してしまう場面。書き込みがどうこうというんじゃなく、実際に会わずとも、ちょっとした電話やメールで人の気持ちはよくなったり悪くなったりするということ。
とある登場人物(声のみの出演、これもまた、ほんのそんなもので人の心が大きく揺れるということを示している)にはほんとうにむかついた。泣いて屈服すれば「それならやめる」。だからメイプルは「絶対に泣かない、許しを乞わない、相手が喜ぶから」と心に決めていたのに。



▼「ロング・トレイル!」の冒頭、レッドフォードとニック・ノルティが最初の宿に到着し、大きな窓から外を見る場面でああ、いいなあと思った。久しく行ってないけれど、登山ってこの映画に描かれてないようなところが大変なんだけどね(この映画はそれでいいの、そういう映画だから)


老人二人が主人公なのに、手触りというか見終わっての感じが、子どもが自分達だけでどこかに行って帰って来たような、例えば「エクスプロラーズ」でも何でもいいんだけど、そんなふうだった。端的に言えば、全然「未来」がある。具体的にどうというわけじゃなく、気持ちの問題だろう。
冒頭アウトドアショップで息子に「ジョークは控えて」と注意されるレッドフォードだが、我慢できず口にしてしまい店員にすげなくされる。後にニック・ノルティから電話が掛かってきた時には、互いに「ジョーク」が言えて楽しそうだ(妻のエマ・トンプソンもユーモアがあるけど「英国人」だものね)。そんなアメリカ映画だった。


本作は原作ありきだけど、例によって、この女版もあればいいなと思いつつ、「山」要素はさておき、「かつて共に放蕩した二人が『成功者』と『負け犬』として再会する」という映画の女版で思い出すのは「バンガー・シスターズ」くらい。でも「婆さん」じゃないし、「成功」というのが「弁護士と結婚した」ことだから話が違う。他に何かあったかな?