消されたヘッドライン


同日に発生した二つの死亡事件。ワシントン・グローブ紙のベテラン記者カル(ラッセル・クロウ)のもとを、死んだ女性と不倫関係にあった議員コリンズ(ベン・アフレック)が訪れる。二人は学生時代のルームメイトだった。取材を進めるカルは、二つの事件が関連していることに気付く。



ストーリー、映像に音楽も手伝って、どこか70年代の映画の匂いがする。「紙媒体からウェブへの移行」や「軍事企業と政府の癒着」といった要素が現れようとも、「2006年から云々」というセリフを聞いても、現代の話であるとなかなか実感できなかった(だから良くない、と言いたいわけじゃない)。
主役で頑張るラッセル・クロウも今っぽくない。ぼろい車を運転し、ジャンクフードをむさぼり食いながら登場する姿に、「アメリカン・ギャングスター」で斧を片手に現場に乗り込むシーンを思い出した。また、夜の駐車場で殺人者の手からすんでの所で逃れるシーンには、ふと「コンドル」('75)の似たような場面が浮かんだ。ああいうシチュエーションって70年代ぽい。もっともラッセルのやり方は、レッドフォードよりかなり強引だけど(笑)


カルが編集局長(ヘレン・ミレン)に吐き捨てるように言うには、「オレはデブで給料が高くて仕事は遅い」。とくに前半は、運よく彼の元に情報が集まっているようにも感じられた。
エンドロールに刷られるのあの新聞まで、カルは記事をひとつも仕上げないけど(だからデッドラインのスリルはないけど、彼の執念深さは際立ってる・笑)、それで回ってるんだから、大きな会社ってすごい。


カルとコンビを組む新人記者のデラ(レイチェル・マクアダムス)については、会議(オンライン組?なのか、若手ばかりが机を囲んでいる)の最中にカルに呼ばれるシーンに、私なら「自分と同じような仲間といるときに、違うステージの人に接触されたときの心の揺れ」を覚えるだろうに、何も感じていなさそうだったのが面白かった。ヒール履いて外回りしてるのも意外だった。


一つ不満だったのは、「実は妊娠していた」というくだり。セリフで説明されるだけなら、なぜそんな必要があるのか?と思う。


それから、この映画に「子ども」は出てこないけど、ワンシーンだけ、背景として大きく子どもの姿が映る箇所があり、なぜかはっとさせられた。