宣伝文句「犯罪がつなぐ、家族のきずな」…って語呂悪くない?と思いつつ武蔵野館にて観賞。かなり混んでいた。母親を亡くし、犯罪一家に引き取られた少年を描く。
「少年を描く」…と言っても、主人公ジョシュア(ジェームズ・フレッシュヴィル)の感情が滲み出るような場面は少ないし、カメラは彼ばかりを追うわけではない。ナレーションも気付けば消えている。この語りは「最後」の後の彼の考察なのだから、もっとしっかり聞いておけばよかった。
とにかくクールでセンスがいいので、私など物足りなく感じたくらい。例えば終盤の裁判のくだりなど、「普通」なら、さて主人公はどうする?みたいな感じで顔のアップや歩く姿のスローモーションが挿入されそうなものだけど、そんなものは無いどころか(まあ要らないけど)、「事後」の素晴らしい一言で結果が示されるのが憎いほど。
犯罪ものとはいえ、緊迫感はあれどアクションシーンはほとんどない。その分却って、一見「普通」の男たちの肉体をまじまじ見てしまった。まずはうなじ、主人公の、確かに「若さは弱さ」でもあるような、世に出たばかりのウブな感じの、でも逞しいうなじ、「教皇」の、皮は厚そうながら無防備なうなじ、巡査部長(ガイ・ピアース)の落ち着きある素敵なうなじ。顧問弁護士が事務所?でシャツを脱いで上半身を露わにする場面など、その体に彼の人となりが表れてるようで面白い。
ジョシュアは全篇てろてろのTシャツ姿、しかも数日間着たきりなもんだから、Tシャツ苦手な私は、しまいには気分わるくなってきた(笑)冒頭母親が死んでもテレビに目をやったままの様子、おじたちが「何か」してると知りながら夜中にパンを焦がしてしまい懸命に削ってる様子、なんだかんだで「眠れない」なんてことはなく、「最後」以外は横になれば寝ちゃってる様子、そんなところに鈍い強さのようなものを感じた。
一家の中心は、ジョシュアの母親が付き合いを絶っていた祖母のジャニーン(ジャッキー・ウィーヴァー)。冒頭の「朝」の場面に空気の読めない、たんに皆が帰ってくるだけの存在と思いきや、普段は奥で控えておいて、いざとなれば「伊達に長年生きてないわ」とさらりと勝負に出る。一家の男たちの唇をもろに奪う様、葬式の際の丁寧な化粧(「あなたすてきね、私はどう?」)、脚を出した服装、私には嫌悪感は抱けなかった。好感ってほどじゃないけど、魅せられた。
「女はよく喋る、そういうものだ」と(まるでその場に「女」が居ないみたいに)弁護士が言い放った後にもけろりとしている。世の中において「女」はそういう扱いしかされないんだから、「私」が特別になろう、とでも決めたみたいだと思った。息子を産んで手なずける、それも一つの方法だろう。
終盤、ジャニーンが巡査部長に声を掛ける場面が本作のクライマックスの一つで、その後の笑みは厚化粧のためかジョーカーのようにも見えた。ああいう「悪」とは違うんだけども。