エンド・オブ・トンネル



「未体験ゾーンの映画たち2017」にて観賞。「ストリップ」(じゃないけど)で犬が立つ場面が面白すぎた。「犬」の使い方がうまい映画、少なくともこの一年じゃナンバーワンかも(笑)


一年に一本お目にかかるかかからないかの、面白さがぱんぱんに詰まった風船みたいな映画だった。私としてはそこまでぱんぱんじゃなくても、くたびれちゃうからってくらい(笑)でもってラスト10分程は、ゴールに向けて風船の空気をぷしゅーっと抜いていくかのような…私達を現実世界に帰すための落語のサゲのような笑いで場内が満ち満ちた。


主人公ホアキン(レオナルド・スバラーリャ)の性格、というかやることなすことがまずいい。程よく狡猾で残酷で、程よく良心がある。まとめれば思い切りがいい、とでも言おうか。ひきこもっていた分のパワーと「時間が無い」せいかもしれない。子どもが密かに喋っている内容が知りたければ親しくなるではなく盗聴するし、女にその恋人の酷さを認めさせたければ縛って残酷ショーを見せる。薬を飲ませもする。一方で「人命」については多少の良心がある。あの「覗き込んでしまう」カットの不気味さよ。


お話は二つのパートに分かれており、それぞれの面白さがある。前半は、最後の家族も失うのかと沈み込んでいるホアキンを、突然現れた女がそれこそ上に乗ってがんがん腰を振るように、生、あるいは性と食で元気づけてくれる(事情も有)。後半は「犯罪もの」のスリルとサスペンス、ホアキンの「計画」はタイトに終わり、彼にもこちらにも想定外のことが次々と押し寄せる。事情が二転三転する中、女の髪がジャングルの木々のように二人を取り囲むベッドでの画がいい。そして「何事も女か運か」による結末(笑)


冒頭からずっと引っ掛かるのが「娘」である。犬の前での「ストリップ」のような格好や「赤い口紅」は母親の真似なのかなと思っていたら、夜中に下着姿でホアキンのベッドへやってくる。しかし「セックス」のようなものは感じられず、訳が分からないでいると、とあることが発覚する。と思いきやまた訳の分からない描写がある。結局のところ、幼い彼女はまだ「分かっていない」のだと思われる。「分かっ」て行動するのは大人達である。それがあのラストシーンに繋がるのだ。