新宿ボーイズ


OUTCAST FILM FESTIVALを機にMadeGood.filmsで見られると気付いて観賞、1995年イギリス、キム・ロンジノット監督作品。歌舞伎町の「おなべバー」ニューマリリンで働くガイシュ、カズキ、タツのホスト3人を捉えたドキュメンタリー。

気心の知れているであろう人達とのやりとり、一同に会しての自分達の軽い紹介を経て、店での場面と3人が誰かに対し、あるいはカメラに向かって自分のことを話す場面が交互に挿入される。とりわけインタビューの内容の力強いこと。根底にジェンダー規範があることこそがその時代を真剣に生きていると表している。「女の子は普通(セックスを)やらないじゃん?許してくれるんだからおれのことが好きなんだ、騙されてないんだと思える、精神的に安心できる」なんて、何も考えない受け売りのやつだって言うけれど、真面目に考えている人が言うのは明らかに違う。ちなみに「おれはおれ、男とか女とかじゃない」と語るこのガイシュはお客の女性から「そんなに性格が悪いんじゃ女だったら嫌われ者だよ」と冗談めかして言われているが、今の私の目で、つまり今のジェンダー規範で見ると、全然そうは思えない(そもそも「性格が悪い」ように見えない)。

それにしても1995年。私が上京して三年目、歌舞伎町はある意味、勝手知ったる…と思っていたけれど、優しく丁寧に撮られている、ニューマリリンの入口をくぐるホスト志願者や新人と3人のやりとり、ピンクソーダに勤める「おかま」のクミのステージと恋人のカズキがそれを見る姿(クミさんいわく「分かり合えた上での同居的な感覚、その上に恋愛があるのがいい」)などに何も知らなかったと気付かされる。時代としては、店内に流れるドリカムやガイシュが歌う『WOW WAR TONIGHT』(これこそがこの年の一曲)、タツがデュエットする『夏の終わりのハーモニー』(リリースから10年経っていない!)、冒頭の誕生祝いのテーブルのコージーコーナーのケーキには、当時はデパ地下以外にケーキを買える店が他になかったと思い返した。女性客に「24でしょ?結婚しないの?」、インタビューで「(女の人は)30近くなったら結婚して子ども作らなきゃとか考える」なんて言わせる社会がガイシュに「生まれてこなきゃよかった」と口に出させる。30年後のいまだ全ての人に結婚は平等じゃない。更には20そこそこだった私達の世代がその後、子どもなんて産まないとは予想されなかったんだなと考えが逸れた。