カット オフ/BOYS ボーイズ

のむコレ3にて観賞。


▼「カット オフ」(2018年/ドイツ/クリスティアン・アルヴァルト監督)はモーリッツ・ブライプトロイ演じる検視官が連続少女暴行殺人犯に娘をやられる話。突如彼に頼まれ遠隔地で死体を解剖するリンダ役に、大好きな「東ベルリンから来た女」でニーナ・ホスの自転車の後ろに乗った少女、ヤスナ・フリッツィ・バウアー。この映画はあまりにサスペンスが過多で、ある種の面白さが潰されてしまっているように感じた。

作り手には関係ない話だけども、入場時にもらったチラシに「『ドラゴン・タトゥーの女』に対するドイツの答え」(The Hollywood News)とあり、娘を誘拐された父親が…というあらすじからしからしてそんなんじゃないのは分かっていたけれど(だって「娘」だからでしょう?/最後に少女達の顔を次々見せて唐突にエクスキューズしてくるけれども)やっぱり全然そんな話じゃなかった。そもそも女嫌いなんて殆どのお話に含まれている要素であって、「ミレニアム」シリーズの新しさというか良さはそれにどう対峙するかってとこにあったから。

この映画の女嫌い要素はサスペンスの材料の域を出ない、とはいえ、「ストーカーの元彼」(「ストーカーなんて便利な言葉だよね、やってることは全部暴力なのに」)につけ狙われているリンダが死体と一緒に閉じ込められるのは全然怖くない、生きている暴力男の方がよほど怖い、という描写は実によく分かる。


▼「BOYS ボーイズ(2014年/オランダ/ミーシャ・キャンプ監督)は15歳の少年が同じ陸上部の男の子と恋におちる話。体感としては上映時間の8割が少年あるいは少年達の躍動する肉体、1割が顔のアップ、残り1割が他という感じで時折気が遠くなりそうだったけれど、終わってみれば悪くなかった。主人公の恋に気付いた親友のくるりとした睫毛に人間愛、すなわち幸せが宿っていた。

オランダの映画を見る機会はあまり無い。先入観もあってか物語前半の強烈な光と陰、ソフトクリームの美味しそうなことが印象に残った。「最近両親が結婚したんだ、ぼくら子どもに夫婦ってものを見せるため」なんてセリフや韓国映画なら見ることのないどちらが年長か分からない兄弟。それでもやはり、少年は恋する相手の少年に「ぼくはゲイじゃない」と言い放つのだった。

オープニングの息遣いに始まり大方は体を動かしている場面。トレーニング風景には少年マークがしているバンダナのせいもあってか懐かしさを覚えた(私が見たことのある練習なんだから昔ながらのやり方なんだろう)。そこへ更に、少年が別の少年と知り合うことで新たな動き、つまりそれまで知らなかった体の使い方が加わるのが面白い。逆立ちや年の離れた妹を楽しませるための遊び、トランポリンなど。