[映画]イレブン・ミニッツ



スコリモフスキの映画を見た直後の感想は「何だこりゃ」というのが殆どだから、期待通りというかいつも通りだったとも言える。



「労働は恥じゃない」
「ポルノ映画の役者でも?」


(以下「ネタバレ」あり)


男が女に耳打ちするも「何と言っているか分からない」くだりなど、とても古臭く感じて、私は今は「ゴーストバスターズ」がいいやと思ってしまった、いや、でも、そう思いつつ、次第に愉快な気持ちにもなってきて、まあまあの気分で終わった。頭に浮かんだのは「なぜ彼らが死ぬと分かっていたのか?」という、あまりにもナンセンスな、あるいは「映画の感想」から逸脱しているがゆえに映画を定義してしまっているような、そんな戯言だった。


そもそも「群像劇」(単に他に比して多くの人が出てくる映画、とでもしておこうか)が好きじゃない。主な理由は「同じ人を見ていたい」からで、例えば本作では、「焦り」や「逃亡」といったこれまでのスコリモフスキの作品にも見られたものが、一人じゃなく何人もによって描き出されるのが、私にはめまぐるしくってしょうがない。また終盤に登場人物達が「すれ違」うという生ぬるい風が、手際は一流とはいえ何度も吹いたのにがっかりした。更に「類似」、本作で言えば「腹を押さえる女」「手を振り回す男」などで各パートを繋ぐのにも白けた。


途中から私には「お仕事映画」のように見えてきた。仕事についての話というわけじゃなく、夕方5時からの11分の街を切り取れば、仕事中の人の割合が高いという事に過ぎない(そういうところがこの映画の面白さだと思う)。ともあれそう捉えると、「映画監督」と「女優」の陳腐に思われたパートも、職業の仮面を被りながらも仕事中では無いという事や二人のやりとりの内容が面白く感じられ、彼らを追う「夫」は(少なくともあの時間の中では)仕事を持たないから「剥き出し」なのだと考えた。つまみ食いをするスタッフは、監督によって仕事人の仮面をちょこっと、剥ぎ取られているのである。