リザとキツネと恋する死者たち



那須の「九尾の狐伝説」をモチーフにしたハンガリー映画。70年代の社会主義下のブダペストを舞台に、30歳の誕生日を迎えた主人公リザが「きつねの呪い」に巻き込まれる様を描く。


オープニング、リザ役の女優さんが朝のシャワーを浴びる画の乳首の位置にクレジット。その「うまく隠した」というんじゃなく「これ、可愛くない?」という感じに引き込まれた。どうせ後で乳首なんて全然普通に映る。ちなみに汚くはないけど早々にうんこも映る。
刑事ゾルタンが愛聴する「フィンランドの音楽」のせいもありカウリマキ映画も連想するけど、それより私は、現代的にアップデートされているけど「裸の銃を持つ男」の匂いを感じた。だって死体の位置、「コーヒーメーカー」、自力でのアレ。そして「男と女」のロマンス。だから一応、ふらつきながらも目出度し目出度しで終わるに決まってるのだ。


リザは「夢の場所」で「夢の男」に言われる、「そのハンバーガーの味は肉じゃなくソースの味だ」「そのシナモンロール(?)は砂糖と脂肪の塊だ」。この映画もそうなんじゃないか、でもそれでいいじゃないか、本当はどうって、だから何なんだと思う。それはどこか、例えばリザがカーテンから作ったワンピースを纏った途端に男達が彼女に惹かれるように、中の体が同じでも外の服を変えれば周囲の見る目が変わる、そのことに似ている。それだって、それでいい、むしろそうでなきゃと思う。
しかしそのうち、作中の「お約束」の「死者」の文字が出ないでくれと願うようになる。互いに自分がやれないこと(修繕)をし合う、生き物を大切にする二人(の関係)に心が沿ってしまって。それは「ソース」じゃなく「肉」のせいだ、この映画にはお肉の味もあったと思う。