ジュリエッタ



新宿ピカデリーにて観賞。アルモドバルの映画を見てももう心踊らないことを改めて確認した。そもそも昔から、この人の「真面目なやつ」にはぴんとこない。


・主人公ジュリエッタ(エマ・スアレス)の、男の名を口にする第一声に、アルモドバルのこの類の映画の女っていつも同じ声というか喋り方に聞こえるから不思議だと思う。


・ロレンソ(ダリオ・グランディネッティ)がジュリエッタのために持ってきた鞄には、一番上にメイクポーチ、それから娘に宛てた分厚い「回想」、一番下に娘からの手紙。それらがあれば死なずにすむ。「怪しまれないように」鞄を携えていても、中身が在るのは皆でない、かもしれない。


・そもそも担架に乗っていたのは本当にあの男なんだろうか?「どう見ても」そうだけど、ジュリエッタはあの時から目隠しされて世界に少しおいてけぼりになったようにも見えた。「全てが私の外で進んでゆく、一つが別の一つを呼んで」


・饒舌な家政婦(ロッシ・デ・パルマ!)、外国人のため喋らない家政婦、流しでの背中しか見えない家政婦、どれも不吉に映る。ジュリエッタは彼女達…「世話をする女」に脅かされ、「世界」から一歩足を引いてしまうはめになる。


・はっとしたのは病院のエレベーターの場面。「君には秘密がある」と言っていた人物が、その「秘密」の末端に絡んでいることを知り、世界が急に違って見えた。何かに「秘密がある」という時、それは「秘密」が編み込まれているという意味で、一部だけが隠されているわけじゃないのだ、ということを思った。